出版社内容情報
近代における音楽美学の創設者といわれるハンスリックの主著,一八五四年に発刊されるや,楽界議論の焦点となり各国語に翻訳された.従来の音楽家が音楽の本質を「感情の表出にあり」と考えていたことに反対し,「音楽的に美なるもの」をもって芸術の生命とすることを提唱した.音楽研究家は勿論,愛好家にも一読をすすめる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
43
音楽が感情を表現するとは当時支配的であった見解のよう。音楽評論家達の偉ぶった物言いは20余の注釈だけ見ても唖然とする。その見解に著者は音楽は特定の感情を表現しないと論駁。音楽は「個人性のない内なるもの」とのヘーゲルの言も一刀両断。この上なく理屈っぽいし賛同しづらい見解も多い。でもヴァーグナーシューマン夫妻ベルリオーズリスト等との交流もあった彼は音楽をこよなく愛する。音楽は自然の模倣でもなく南洋諸島の土人たちの打楽や叫び声とも違い、旋律和声リズムからなる人間精神の偉大な所産であると叫ぶが如く論を展開する。2025/03/12
壱萬参仟縁
1
「愛情は愛する人の表象なくしては、また幸福や賛美への努力と希望なくしては、またこのような対象を所有しようとする欲求なくしては考えられない。単なる心の動きの種類ではなく、その概念的中核、その現実的歴史的な内容が愛情を作る」(pp.37-38)。音楽によるまちづくりを研究した際、読んだ本著であるが、ベートーベンの叙述などから、迸る感情の発露が音楽なのだろうか、と考えさせられた。2012/04/15