岩波文庫 チベット仏教王伝―ソンツェン・ガンポ物語

ギェルツェン，ソナム【著】/今枝 由郎【監訳】

岩波書店（2015/04発売）

• サイズ 文庫判／ページ数 414p／高さ 15cm
• 商品コード 9784003349816
• NDC分類 222.9
• Cコード C0122

出版社内容情報

観音菩薩が発した光から、化身の王が誕生する――十四世紀に著された物語性豊かな歴史書は、今もチベットの人々の心に生きている。

内容説明

観音菩薩が発した光が暗黒の地チベットに届き、化身の護法王が誕生する―１４世紀の学僧が、仏教伝来と建国の王の物語を観音信仰に基づいてまとめた歴史書。口承性・物語性を豊かに含む力強く鮮やかな物語は、今もチベットの人々の心に生きている。チベット語原典からの平明な口語訳に、詳しい訳注と用語集を付した。

目次

宇宙の成り立ち、インドの護法王の系譜、そしてブッダ・シャーキャムニの出現
仏塔と仏像の建立とシャーキャムニ十二歳像の中国請来
中国とモンゴルへの仏法の広まりとその王統
観音菩薩が蓮の花の上に現れたことと六字真言の功徳
観音菩薩による有雪国チベットの衆生の成熟と解説へのお導き
観音菩薩の化身である馬王バラハによる衆生の教化
猿と岩の羅刹女から生じたチベット人の系譜
チベットの王統の始まり
護法王ソンツェン・ガンポの誕生
チベット文字の考案と十善戒に基づく法の制定
ソンツェンガンポ王の誓約仏のインドとネパールからの請来
ネパール妃ティツィンの招請
中国妃文成公王主の招請
ソンツェン・ガンポ王と二人の妃による寺院建立
落慶法要
将来の利楽のための埋蔵と教え
ソンツェン・ガンポ王と妃たちの最期

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[壱萬参仟縁]

六趣の衆生の救済（72頁～）。観音菩薩は地獄に赴き、六字真言の教えを説き、衆生を利楽に導いて、熱と寒さの苦しみをお鎮めになった（72頁）。地獄に墜ちたくないな。十善戒を手本とした２０の世俗の法：三法に帰依。父母に感謝。恩人を悲しませない。恩義に報いる。清らかな人と争わない。行いの正しい人に従う。仏法と文字を学ぶ。一切の不善を回避。人の嫌がることをしない。正直で良心に従う。慎み。借金期限までに返済。口出ししない。女に惑わされない。土地神や護法神を証人として宣誓など（133頁～）。

2015/08/19

[ラウリスタ～]

どうせつまらないんだろうと思っていると、意外に面白かった。チベット仏教の伝説であり、むしろチベット建国の神話。ネパールから容易く王妃を迎え、その後、中国からは数多くの試練を乗り越えて王妃を獲得する。猿の父と羅刹女から生まれたチベット人の二面性については面白い（猿のほうがいいんだ）。チベット仏教での観音菩薩っていうのは結構すごい存在なんだな、キリスト教でいう救世主的な。それでいて、チベットの王を（今も）人間に化身して、荷なっている。

2015/06/01

[釈聴音]

チベットの建国神話の中心となるソンツェン・ガンポ王の事績が描かれているが、実在の王についての歴史というより観音の化身としてチベットの地に仏教を広めた一種の文化英雄としての王をめぐる神話が語られる。仏教と仏像が不可分なものとして語られ、仏像がそのまま仏の化身であり王と同一のものと見なされている点が興味深い。

2015/05/08

[Ｋ子]

１４世紀に書かれた歴史物語『王統明鏡史』の序章から第１７章までの訳です。なぜ途中までなのかは知りませんが、なかなか読みやすくて面白いです。 かなりかみ砕いた訳なのだろうと思います。本当に原文にそう書いてあるのだろうか、と思えるような箇所も幾つもありました。 須弥山世界の図が掲載されていたり、巻末には、訳注、挿絵付きの用語解説、チベット文字の表、解説があります。 無論、７世紀の人物であるソンツェンガンポ王のことを１４世紀に書いているのですから、書いてある内容は史実として信頼するにはあまりにも遠いのですが、

2017/06/28

[0422]

とてもいい。平易なわかりやすい物語。

2015/06/03