出版社内容情報
イギリスの外交官にして日本研究者である夫ジョージ・サンソムの赴任に伴って来日したキャサリン・サンソム(一八八三―一九八一)が,昭和初期の東京の街と人々の暮しを軽妙な筆致で描いた日本印象記.母親のねんねこで眠る赤ん坊,お喋りに夢中な店員など庶民の姿が暖かい目差しで描かれほのぼのとした人間観察記になっている.挿絵多数.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
66
昭和初期の日本滞在記でしたが、著者の目線が優しく、偏見がない事に驚かされました。 まだまだゆったりした時代だったのでしょう。 日本人の歩き方がゆっくりな事に度々触れていたのが印象的でした。 また電車等の割り込みが日常化していたというのにはびっくりしました。 少しずつ民度が上がってと思われる点、下がった点が見受けられました。 外交官夫人としての資質とは、こういった赴任先での相手国をあたたかい目でみる姿勢、努力だなぁと感じ入りました。2015/12/24
はる
48
昭和初期に来日した外交官夫人の、日本の印象記。当時の日本と日本人の姿が率直に語られていて興味深く、面白かったです。日本が軍国主義に向かう中、蔑むことも無く、日本人と日本文化を愛してくれているのが嬉しい。上品で穏やかな御人柄。ただ、その考察はなかなか鋭いです。彼女が指摘する日本人の欠点は、現代にも通じるように思いました。2015/11/19
苺***
33
イギリスの外交官の妻、キャサリン・サンソムが、日本や昭和初期の東京について描いた日本印象記。日本風土や日本人をよく観察していてとても面白い。80年以上前の事なのに、読んでいると今とそんなに変わらない印象を受ける。変わってしまった事と言えば、時間の流れが速くなってしまった事。それが日本人を変えてしまった要因の一つとも言える。昭和初期は東京でさえ時間の流れがゆっくり、のんびりしていると書かれている。丁度、私の祖母が若かった頃の日本。読んで懐かしい気持ちになった。2015/01/03
ワッピー
29
10年程度の浅積み本。外交官夫人として来日した著者が1928年から1936年まで日本(の主に東京)で暮らした記録。次第にナショナリズムの高揚に向っていった時代で不便・不満はあっただろうに、やんわりオブラートに包んで日本の風俗をあたたかく見守り、楽しんでいる様子が伝わってきます。当時の日本人が現代とそうは変わっていないようにも感じます。この本の洒脱な挿絵は一時西脇順三郎と結婚していたマージョリー女史の手になるもので、あわせて雰囲気を楽しみました。時代背景を知って読めば更に発見があるかもですが、まずは一読。2025/04/02
Emiko
23
読書中わくわくする気持ちが沸き起こり丁寧に読みたいと思った。幅広い分野における日本人・文化・習慣・風俗の描写が本当によく観察されていて面白かった。約80〜90年前日本人は思ったより色んな意味で寛容な面も多かったようだ。イギリスや欧米も私たちの知っているイメージとは違う時代だったよう。この時代から既に畳に坐るのを嫌う人がいたり西洋文化をうまく取り入れ旧来のものとうまく折り合いをつけて生活しているところ、他人への鷹揚さ女性の生き方など1世紀近くたった今変わった所と変わらない所…考えさせられつつ楽しく読めた。2015/07/16