出版社内容情報
古来,その位置が謎につつまれた幻の湖ロプ・ノール.中央アジアの奥深くひそむこの大湖は,実は砂漠の中を渡り鳥のように一六〇〇年周期で南北に移動する湖なのである.この壮大な学説を提唱したヘディンが,自らの仮説を実地に検証し,長年の論争に決着をつけるべく旅立った念願の探検の記録.写真・スケッチをすべて収録.
内容説明
あたかもヘディンの学説提唱にこたえるかのように流れを旧河床に戻したタリム川を、一行はカヌーに乗り、新生ロプ・ノール目指してくだってゆく。眼前にひろがる美しい自然、古都楼蘭の遺跡、神秘的な王女のミイラ。数々のロマンにみちた光景をヘディンの筆がいきいきと描き出す。原書の写真・スケッチはすべて収録。
目次
ロプ・ノール湖畔および楼蘭の最終の日々
ベースキャンプへの帰還
コンチェ・クム・ダリヤ河畔の動物
バリマンの砂漠の旅
クム・ダリヤ河畔での陳の活動
敦煌千仏洞に向かう
北山山脈の迷路
ガシュン・ゴビの砂丘
野生の駱駝の故郷を通り過ぎる
道の終りに
さまよえる湖
最新の脈動
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
35
幻の湖ロプノールを巡るヘディンの探検記。後半はタリム河畔の動植物の様子や、自動車部隊でかつてのシルクロードをたどる旅。自動車やカヌーを使い、たくさんの荷物を持っての旅は「探検」とはちょっと趣は異なる。でも前回から35年ぶりの探検、ヘディンの年齢はすでに70過ぎ。想像以上に過酷な旅だったのだろう。タリム川の野鳥にカンムリカイツブリ、ユリカモメ、ツクシガモなどおなじみの鳥の名前が出てきたのは面白かった。さて、今のロプノールがどうなっているか?灌漑用に作られたダムのため永久にその姿を消したのは残念である。★★★2014/04/12
かふ
21
昔の岩波文庫は字が小さい。それだけ砂漠の地をさまよう読書となった。湖以前に自分の方がさまよってしまった。前編は砂漠なのにカヌーの旅なのかと不思議に思っていた。砂漠を囲むように高い山脈が雪解け水を運ぶのだが盆地ゆえに乾燥地ということで水が砂地に潜ってしまう。ヘディンは地勢学者でそこを間違えないようにしないと桜蘭のミイラに感動したりしてしまう。現在の砂漠化は灌漑や道路がもたらした人工的なものであるような。かつて川があった場所のスケッチが観察者らしくいいなぁと思った。文学者でもないので物語的な抒情性からは遠い。2025/08/17
ソングライン
16
かつて、さまよえる湖ロプ・ノール周辺を調査したヘディンはある仮説をたてます。高低差の少ない砂漠の地形から湖への堆積物により湖底が次第に上がり、以前に干上がった湖底は風の浸食により下がり、標高の低い方へ湖は移動する、1000年の時をかけて。その証明のためのダリヤ川の湖への流入を確認するカヌーの旅はクライマックスを迎えます。目的を達したヘディンはさらに東方からのロプ・ノールへの自動車走破への旅に向かいます。科学を元にしたヘディンの冒険に引き込まれます。2022/12/14
tsubomi
11
2016.02.01-02.10:ロプ・ノールに到達後、こんどは敦煌を経て東から西へ自動車で走行できるルートがないか探索にでかけます。ちょうど漢民族と回教民族との間で紛争が頻発している時代で、中国の中央政府から反対されたり、賊に遭遇したり、車が壊れたり・・・。道なき道を測量しながら進む彼らの勇気と好奇心とチームの一体感は、著者の巧みな文章によって一流の冒険物語に仕上がっています。後半では学術論文や地図を用いて、湖が北へ南へと振り子のように行ったり来たりする仕組みが科学的に解明されてスッキリ。2016/02/10
壱萬参仟縁
7
賈逵はネットで調査。湖に多くの鳥が集まる描写はなかなか平和的な光景で好感度アップ。小さいが優雅なあじさし、灰色で茶色のひめくいな、太嘴のおおじゅりん、川千鳥、こうのとり、さんかのごいは湖のヤク(58ページ)。敦煌の洞窟や彫像は世界史史料集に載っていそうだが、なかなかいいものだ(94-5ページ)。常にマイナスの世界。11月で零下23.8度(146ページ)。キャラバン隊はのんびりしたなんともいい感じの風景なのがいい。日本なら鳥取砂丘ぐらいか。200ページの地図は見た目がノラりクラりで面白い。これが名の由来か。2012/12/28