出版社内容情報
ルネサンス期,キリスト教の苛烈を極めた異端糺問によりおびただしい数の「魔女」が焚殺された.「魔女」とは一体なんであったのか.ミシュレ(一七九八―一八七四)が,中世初期から十七,八世紀まで,歴史の流れを追いつつここに描き出す魔女の姿,それは人間性を踏みにじられつづけてきた民衆の女性の悲惨な姿なのである.
内容説明
教会、封建領主、さらには男の家族からも支配の鞭をあびせられつづけてきた中世の女たち。“魔女”は男性中心社会の歴史の中で女性がおかれてきた人間性喪失の極限状況を象徴するものである。この書物に描き出されたのは、女性の立場からみたヨーロッパの歴史にほかならない。民衆史家ミシュレの思索と体験のすべてがもりこまれた書。
目次
頽廃期の魔女。サタン、数を増し卑俗化する
魔女たちへの鉄槌
フランスにおける寛容の百年―反動
バスクの魔女たち。一六〇九年
サタン、聖職者となる。一六一〇年
ゴーフリディ。一六一〇年
ルーダンの悪魔につかれた女たち、ユルバン・グランディエ。一六三二‐一六三四年
ルーヴィエの悪魔につかれた女たち、マドレーヌ・バヴァン。一六三三‐一六四七年
サタンは十七世紀に勝鬨をあげる
ジラール神父とカディエール。一七三〇年
尼僧院のカディエール一七三〇年
カディエールの裁判。一七三〇年-一七三一年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴィオラ
10
今年の個人的テーマである「魔女狩り」関連本。上巻では、当時の社会構造を絡めつつ女性が「魔女」になる(される)過程が小説風に、下巻ではいくつかの実例を挙げて「魔女」にされた女性たちの姿がノンフィクション風に描かれている。特に下巻に描かれる女性の扱いが酷くて結構パワーを持っていかれる読書でした…。 反キリスト教的とか関係なしに、ただ単に保身や権力争いの駒として「魔女」にされてしまう理不尽さ…。「レッテルを貼って特定の人達を攻撃する」人々は、残念ながら現代でも健在。せめて自分はそうならないように、と。2020/06/03
壱萬参仟縁
9
著者は、魔女の生涯の単純だが力強い公式を示すことを目的に書いたようだ(331頁)。「金持は懺悔にやってきて、へりくだりながら威嚇するような調子で、学者(ドクトゥール)から良心を傷つけずに罪を犯す許可をむりやり奪いとる(169頁)。ひっでーなぁ。矛盾しているような行動だ。18Cとは、「最上層が文明化し、啓蒙され、知識という光明にあふれればあふれるほど、その下では、聖職者の世界や、尼僧院や、信じやすく、病気がちで、何でもすぐ信じてしまう女たちの世界の宏大な領域がますます固く閉ざされた」(173頁)。2014/02/04
ゲニウスロキ皇子
3
医学・科学、サタンとの間に授かった呪われた私生児である、を孕んだ魔女たちは、暗黒の中世の中で炎の中に投げ込まれ消えていった。彼女たちはついに滅び、新たな時代の幕が開ける。しかし魔女たちは、あのサタンの情婦たちは、敗れ去ったのだろうか。否。エピローグにて魔女たちの叫びと血と灰を喰らった街トゥーロンを照らす曙光は、彼女らの勝利を象徴しているように思えてならない。2011/10/23
Joao do Couto
1
後半は魔女が力を失っていった過程が描かれる。少し官能的であり、それでいて切ない。いわゆる研究書としての歴史書とは異なっている。構造的でありながら、物語的(ナラティブ)である。文学よりの歴史書だと思う。西洋史の知識がもう少しあるともっと理解が深まると思えた。まずはミシュレの歴史書の魅力を味わえたということでよしとする。2022/06/15
ATSUSHI
1
とても面白かったです。中世時代に何が行われていたかを知ることは現代においても大いに価値があると思いました。中世の教会がここまで腐敗していたとは知りませんでしたし、ひどい時代だったんだなと思いました。 何よりもミシュレの語り口がとても小説のようで示唆に富む内容でした。2017/01/22
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