出版社内容情報
風雲急をつげる幕末・維新の政情の渦中で,生麦事件等の血腥い事件や条約勅許問題等の困難な紛争を身をもって体験したイギリスの青年外交官アーネスト・サトウ(一八四三‐一九二九)の回想録.二度まで実戦に参加,攘夷の白刃にねらわれたり砲煙弾雨の中をくぐったサトウの体験記は,歴史の地膚をリアルに感じさせる明治維新史の貴重な史料.
内容説明
1862(文久2)年江戸在勤の通訳を拝命してから、1869(明治2)年一時帰国するまでの日本での体験・見聞を綴ったイギリスの外交官サトウの回想録。日本の事情に通じていたサトウは、相次ぐ事件のエピソードにからめて、当時の日本の風物、人情、習慣などを生き生きと描き出す。わが国近代史上に活躍した外国人の記録の中でも出色の1冊。
目次
日本の役人との社交、新潟、佐渡の金山、七尾訪問
陸路、七尾から大坂へ
大坂と徳島
土佐と長崎
将軍政治の没落
内乱の勃発(一八六八年)
伏見の戦争
備前事件
初めての京都訪問
腹切、京都における天皇謁見の交渉
堺におけるフランス水兵虐殺
京都、天皇に謁見
江戸帰着、および大坂における公使の新信任状奉呈
雑多な事件、水戸の政争
若松の占領と天皇の江戸行幸
榎本、脱走した徳川の軍艦をもって蝦夷を攻略
一八六九年、江戸において天皇に謁見
東京における最後の滞在、故国へ出発
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
74
大政奉還から鳥羽伏見の戦い、江戸城開城、そして戊辰戦争へと時代は動いていく。薩長らの雄藩を支援するイギリスと、幕府を支援するフランスの競争は、明治維新の成立でイギリスの勝利に終わる。雄藩や幕府要人と関係を築いて、情報収集と分析を行ったサトウの貢献は大きかったといえるだろう。明治二年にサトウが賜暇帰国のために日本を去るところで本書は終わりとなるが、翌年には日本に戻る。その後の外交官任務も合わせると通算25年に及ぶ日本の滞在のあいだに、サトウは明治日本の発展を見守り、のちに日英同盟の推進に尽力することになる。2023/11/26
Gotoran
66
江戸末期に通訳として来日し、実績が認められ、書記そしてオールコック公使やパークス公使の秘書となり、明治維新前後の日本国中を縦横無尽に活躍したと云うI.サトウ。本書、下巻では、1869年(明治2年)に離日・帰英するまでに、起こった大政奉還から天皇の江戸(東京)入場までの出来事が、歴史上の人物たちとの交流の挿話を交え、更には、当時の風物、人情、習慣をも含めて、生き生きと描き出されている。英国外交官という第3者視点からの幕末・明治維新を捉えた貴重な資料の1つに違いない。実に興味深かった。2016/10/20
sayan
52
サトウの視点はR・ベネディクトが指摘した日本文化の特徴に通じる。階級制に注目し下層階級は被支配欲が強く、権能をもち武力が背後にあればその傾向が強いと言う。そして英の日本統治は容易しかし失敗すると言う。理由は日本語の読み書き不可な外国人に権能を認めないからと纏める。Post戊辰戦争のサイクスピコ協定の可能性もあった中で「局外中立」を巡る列強と岩倉間の緊張感ある交渉場面が刺激的だ。結果、列強が明治政府を承認し、各国は独立・平等の存在と言う主権対等の観念・価値を共有するに至る。本書は国際法と日本の関係日記だな。2021/01/09
キムチ
50
18歳より6年半過ごした野蛮な国の印象を極めて「幸福だった」と締めくくっている。国民として どう考えてみても江戸時代の「巧妙に作られた政権と文化、社会の安定性」は奇妙。蘭・英・仏・露・伊等 扉を叩いた西洋人からすると理解に苦しむのも当然。だから欧州の市民革命から遅れること1世紀余りの政治的瓦解の理解の道筋として古よりの旧弊・頑迷を繋げたのかも。とはいえ、サトーの文章では市民たちの台頭があったとは言っていない。煌めく幕末歴史的シーンで次々と会合した男どもは薩長・・しかも有能とある。引き換え幕臣は?2017/01/05
金吾
42
下巻は歴史の奔流が書かれており、一気に読めます。好意的視点とシビアな視点の両面から淡々と書いているためいい感じで読めました。人物描写が日本の階級社会から隔絶した立場から観ているので面白かったです。また、備前事件という全然知らなかった事件を知れたのも良かったです。2021/01/27