出版社内容情報
本書は名著「ローマ帝国衰亡史」6巻を完成した晩年のギボン(1737‐1794)が気品高くしかも軽妙な筆致をもって彼自身の生涯を叙したものである.さまざまな世事に煩わされながらも刻苦精励十数年にわたって大著を完成した彼の堅忍持久の精神を伝えるとともに,大学,教会,議会など18世紀中葉のイギリスの社会状態も鮮明に描き出している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
21
【要旨】歴史家ギボンの自叙伝と著作の思い出。【感想】旧字体のおかげで読みにくい。満ち足りた人生だったのか不平不満なく幸福な日々を描くように筆が進む。周りの人が地位や財産を築いているのに対し自分がまだ何も成していないことの焦りや不安だけが例外的。大学教授ではなく従軍や政治家、社交、文学論を著すなど多様な活動をしているのが意外だった。それとともに生涯を通じて歴史に向き合い続けたことがわかる。著作の「ローマ帝国衰亡史」も読んでみたい。大著で骨が折れそうだが。2016/11/09
大森黃馨
7
初版は昭和18年よくあの時代に此の様な書を出せた自分の所有しているものの版は第6版よくここまであまり売れていないのに絶版にならなかった だが初版から一度も改定されていないので旧字体のまま活版は大きめで案外すらすらと読めはしたがなんと読めばいいのか分からずに最後までどういうことが書かれていたのか分からなかったものもしばしば せめて新字体で改訂版を出して欲しいが無理だろうなあ 2023/07/21
讃壽鐵朗
5
いい時代にいい家に育って満足した人生を送った記録として読んで、こちらも幸せな気分になってくる2016/05/26
壱萬参仟縁
4
1943年初出。旧字体。ギボン→シェフィールド卿宛で、露骨な真実は痛風の発作以上に貴兄を驚かせ参らす可候共(264頁)云々。いつ発作がくるか、怯える人生だな、評者も。私宅教師や独習で勉強した者は、古典の意味や精神はつかんでゐても、音量の読み誤り(49頁)と批判されるが、さりとて、音読は我流でも仕方ないと思える。努力は認めていただきたい。オックスフォード、ケンブリッジといえども、虚誕蒙昧な学問の行われた暗黒時代に設立とは(62頁)。新しい書物を読むのに輪郭や順序を一瞥して熟読を後回し(136頁)は私に似る。2013/04/05
うえ
0
「私が庭の四阿で最後の頁の最後の数行を認めたのは1798年6月27日の日,というよりその夜,11時から12時の間であつた。筆をおいてから私は田園や湖…を低徊した。空気は緩かに空は澄み渡り,銀色のまん丸い月が湖に影を映し,萬寂として聲無きさまであつた」「私は改めて清書せず,最初の粗雑な草稿をその儘印刷所に送つた。著者と印刷者以外に誰一人唯一枚の原稿も見た者なく,欠点も美点も専ら私自身のものである」2014/03/23