出版社内容情報
紀元前431年に勃発したペロポネソス戦争は,27年の長きに亙ってギリシア全土を混乱の堝と化した.自らその渦中にあったトゥキュディデス(前460‐前400頃)は,動乱の全過程を克明に記録し,歴史を動かす大きな力の本体を混乱の背後に見きわめようとして本書の筆を執った.鋭い緊張のみなぎる雄渾な筆致で記述された大戦役の歴史である.
内容説明
ペロポネーソス戦争は、古代ギリシア世界始まって以来の大規模な戦争であった。その渦中にあったトゥーキュディデースは、動乱の全過程を克明に記録する。
目次
巻1 序説(一‐二三)予断(一)、考古学(二‐二〇)、方法叙説(二一‐二二)、今次大戦の規模ならびにその遠因、近因(二三)(エピダムノスをめぐるケルキューラとコリントスの紛争;ケルキューラ、コリントス両国使節アテーナイに来たる;ケルキューラ沖海戦;ポテイダイアの変 ほか)
巻2(テーバイ勢、プラタイア奪取のこころみ;ペロポネーソス同盟、アテーナイ側同盟の各々の成員と戦備;ペロポネーソス同盟軍、コリントス地峡地帯に集結;アルキダーモスの演説 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
15
20年ぶりぐらいに読んだ古代ギリシアの歴史書。最近グテーレス国連事務総長が「トゥーキュディデースの罠」と言う国際政治学上の述語を使っていたので、その言葉の元になったこの本を再読することにした。ペロポネソス戦争で対立したラケダイモーン(スパルタ)アテーナイ両陣営の外交戦術、軍隊の動きなどが時系列ごとに活き活きと眼の前に再現されるかのごとく描写されていることに驚く。ラケダイモーン陣営がアテーナイ陣営の勢力伸長に脅威を感じている辺りは現代国際政治で中国の擡頭に脅威を感じているアメリカの姿を彷彿とさせる。2018/10/24
ホームズ
8
序文の作者ツゥキディテスについての話は興味深い。ペロポンネソス戦争の開戦直前からの記述。ヘロドトスの『歴史』に比べて色んな人の演説が多かったな。 アテネで発生した疫病の記述はやはり作者が実体験しただけに凄かった。 とりあえず地図があると分かりやすいな(笑)2002/03/11
ハルバル
5
ペロポネソス戦争に至るまでの経緯と三年目までの戦史。 ヘロドトスの歴史を読んだあとだから読みやすいのなんの(笑) 詳細な年表も附せられていて、これが非常に便利だった。 事実に重きを置くあまり物語性を排した描写が続き、やや退屈かと思った頃に著者の歴史認識にはっとさせられたり、演説が出てきて眠気が覚める(笑)構成は絶妙だ。 中でもペリクレスの戦没者追悼演説は歴史本にもよく引用されるので興味深く読んだ。アテナイで流行した疫病による壮絶な様子が鬼気迫る描写で書かれていてなかなかに読みごたえがある2014/09/20
てっき
4
以前から読まねばと思っていてやっと読めた本。 全くペロポネソス戦争なんぞ知らない無知無学の自分でも、地図さえ横に置けば非常に読みやすい戦史ものだった。 総論的感想は下巻に記すとして、本書の中で気になった点をいくつか記す。いわゆる「トゥキュディデスの罠」的開戦の下りがメインで書かれている部分だが、個人的には、覇権国に対する挑戦者、という関係性に不慮の衝突が起こることで戦争に至る、という巷に言われるような開戦経緯と言うより、覇権国が一方的に突っかかっていった挙句に反発を生んだ、というように見受けられた。2023/06/18
ピリカ・ラザンギ
4
ギリシアの地名も国の名前も人の名前もはっきり言って頭に入ってこない。 ただ、どこの人がどこを攻めた。どれくらいの兵力があった。などの記述が基本的に続く。 読んでて面白いのは、疫病が流行りモラルが破壊される様や、戦争を知らない若者が戦争にはやる様子。人は昔から変わらないと思える部分が楽しい。あと、後ろの解説もなかなか面白い。特に職業的な兵士の誕生やオリンピックについてなど。2016/02/06