出版社内容情報
キリスト教神秘思想を代表する修道士エックハルト、中国、日本の禅僧の問答、真宗の念仏者の極点・妙好人の信心の世界、これら東西三者を宗教の普遍的真理「神秘主義」に連なるものとして、自在に論じる。大拙が戦後、英文で世界に発信、欧米人を感嘆・魅了した晩年の代表作。初の日本語訳を文庫。(解説=安藤礼二)
内容説明
中世キリスト教修道士のM.エックハルト、中国と日本の禅僧、浅原才市ら真宗の念仏者・妙好人。東西の求道者たちは、霊性の場において出逢う。仏教とキリスト教、あらゆる宗派を貫通する宗教的叡智である「神秘主義」の展開を、縦横無尽に論じる。欧米人を魅了した、晩年の大拙の代表的な英文著作。初の日本語訳。
目次
1 マイスター・エックハルトと仏教
2 仏教哲学の基盤
3 “一刹那”とさとり
4 永遠の光の中に生きる
5 輪廻について
6 十字架とさとり
7 このまま
8 「南無阿弥陀佛」についての覚え書
9 蓮如の「御文(章)」
10 才市の手記より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
沙羅双樹
16
仏教では、釈尊が涅槃に入られ、弟子たちのみならず、人間であるなしに拘らず、全ての存在に取り囲まれて、沙羅双樹の下で静かに身を横たえておられる有り様が描かれている。それは、始めから自我という実体が無いので、十字架の必要がないのである。一方キリスト教では十字架を必要とし、実体性というものは非業の死を要求する。そしてなんらかの形で復活するということがなければならない。というのは、両者は併行関係にあるものだからである。それが東洋人と西洋人の考え方の違いと言ってもいい。再読を重ねて勉強してゆきたい。2020/06/11
amanon
12
現代語訳『正法眼蔵』の冒頭を眼にした時、「ああ、エックハルトにどこか似てる」と直感した。本書ではその『正法眼蔵』への直接的な言及はないが、エックハルトと仏教を対比させて語る際、当然念頭に置いているだろう。ただ、時代的な制約があるため、エックハルトの引用が、実際にどの著作のどの部分であるかが明らかにされていないのが、個人的に残念。大拙がラテン語著作にも触れていたら…と思うと、その点も惜しい。また浅原才市の手記に驚愕。素朴な信仰心がこれ程の深みを持っているとは…あらゆる知性や学問を凌駕する信仰心に頭がさがる。2020/05/23
roughfractus02
10
汎神論と見なされるエックハルト思想から、汎神論に一神教における否定による区別の操作を見、エックハルトも禅も「一即多、多即一」の肯定において類似すると捉え直す。英文を邦訳した本書は、欧米人の「空」解釈にも否定の意味が混ざる点を見て、「絶対空」の無分節の充溢性を強調して否定/肯定の二項から成る知を超えることに仏教の目標があると説く。仏教は知ることでなく見透すことを重視し、見透すためには体験を要するという。この体験こそ悟りだ。矛盾も曖昧さも容認するこの体験は、むろん知を否定しない。ただ知に頓着しないだけである。2021/02/25
shimashimaon
7
NHKラジオ『鈴木大拙 願行を生きる』で浄土宗の「妙好人」が紹介されていたので手に取りました。最近Voicyを聴き始めて、フォローしている複数のパーソナリティが言っていることに大いに刺激を受けているのですが、本書(「妙好人」浅原才市らの詩等)からも同様の示唆を得ました。すなわち「あるがまま」。「真如」は”Suchness”、そのようにしてあること。「渇愛」は慈悲の源。ショーペンハウアーの生きる意志にも通じると思い、彼が推奨するようにプラトンとカントを丁寧に読んで『意志と表象としての世界』を再読したいです。2023/12/31
和敬清寂
4
全部読んだわけじゃないけど、やっぱり大拙先生は素晴らしい。 海外に対して、仏教の真意をこんなにも頑張って伝えようとしていたなんて! もっと日本で評価され見直されるべきではないか。 十字架とさとり、の所が凄く良かった。 「処女性というものは、いかなる知的分別にも煩わされぬことに帰着する」2020/05/31
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- 和書
- 証言・臨死体験 文春文庫