出版社内容情報
中国最初の史書『史記』の最後にこの七十の列伝が置かれている.宰相,武将,循吏,酷吏,刺客,侠客,素封家等,司馬遷は貴賤を問わず「正義を保持し,ひとに屈せず,機を失わずして世にあらわれた人々」をとりあげ,それぞれにしたたかなこれらの人間の生きざまを,躍動する筆致で描き,史記の全体世界像を構成する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ビイーン
30
3巻前半で「股くぐり」韓信の列伝があり、この巻の中で最も面白い。この後からは韓信を超える活躍をした大物の英雄は登場しなくなり、後半は文帝、景帝時代の突出した活躍がない重臣の列伝で締めくくられる。3巻後半で繰り広げられる権力闘争の政局は近代以降に通じる話で何となく親近感を感じるが物語としての面白味に欠ける。続けて4巻を読もうか迷う。2025/09/29
6 - hey
6
韓信の話がやはり一番面白い。不遇の青年時代がなんとも…。青年時代の自分を馬鹿にした人たちに偉くなってから施しを与える場面は考えさせられる。2013/07/07
荒野の狼
3
岩波のシリーズは列伝の全訳と思い購買したが、本書では、第45 扁鵲倉公列伝が、断りなしに、完全に省略され、題名しか書いていない。扁鵲倉公列伝は、古代中国の名医である扁鵲と太倉公の伝記。扁鵲倉公列伝は、”世界の名著”の史記列伝でも省略されているので、本書では、全文を掲載して欲しかったところ。本巻を購買する人の多くは、項羽と劉邦の時代の武将に興味を持っている人が多いかとは思うが、27-31巻の李斯、蒙恬、張耳陳余、魏豹彭越、黥布は収録されていない。2014/11/10
sonohey
3
「まったく、すぐれた人物は、その死がいかに重要であるか 、をよく認識している。……一時の激情にかられて自殺するのは、真に勇気があるからではない。それまでやってきた自分の企てが、そこで失敗してもう取り返しがつかなくなった、と思いこんでの結果にすぎない。」司馬遷は単に自殺を否定しているのではなく、志半ばで死ぬことを恐れていたと思われる。すべての名誉を失っても、自らの名を文字通り歴史に刻むことこそが彼のプライドであり、卓越した知識と執念は今なおその命脈を保つ。2019/04/06
綾野理瀬(Ayano Lise)
3
呉楚七国の乱、韓安国の失意の死まで。だんだんと時代が下り、昔の伝説的「賢者」、「名君」は姿を消し、司馬遷の同時代人の逸話が多くなるので、彼の筆も冴え渡る。韓安国と獄卒の、灰にまつわるやり取りは、後世の漢詩にもよく典故として登場するのでなじみ深い(失脚・不遇の詩人の詩にはほんとうによく出る)。呉楚七国の乱は、世界史の教科書ではさらりとしか扱われなかった記憶があるが、これは面白かった。謀叛の相というのは観相学でいうとどんな容貌なのか。何かの骨格でしょうね。太后の御簾政治の厄もすごい。西太后もびっくりである。2017/11/09