出版社内容情報
中国最初の史書『史記』の最後にこの七十の列伝が置かれている.宰相,武将,循吏,酷吏,刺客,侠客,素封家等,司馬遷は貴賤を問わず「正義を保持し,ひとに屈せず,機を失わずして世にあらわれた人々」をとりあげ,それぞれにしたたかなこれらの人間の生きざまを,躍動する筆致で描き,史記の全体世界像を構成する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MAT-TUN
9
面白すぎる歴史書。諸葛亮孔明が心から尊敬したといわれる楽毅の列伝は、何度涙したかわからない。超大国秦を相手に智力を尽くして対抗する廉頗・藺相如列伝は数え切れないほど読んだ。故事成語である「完璧」の故事は、こんなに面白い話だったとは。刺客列伝における始皇帝暗殺の話も非常に面白い。私の初めて覚えた漢詩は、刺客列伝にある荊軻が旅立つ名場面での「風蕭々として易水寒し、壮士一度去って復還らず」の詩でした。ああこの書への関心はまだまだ続く。2011/12/12
CCC
7
歴史は勝者が作るものと言うが、史記は敗者の書に思う。栄達を誇っても次には砂のように崩れ、挟持を守る者はそれがために滅びる。2014/10/30
saru
6
読みやすい2016/11/07
6 - hey
5
秦の統一が近付き、「○○君の活躍」などという話は少なくなってきます。それにしても趙高の胸糞悪さは異常。2013/07/07
にゃん吉
4
屈原列伝では、司馬遷が、屈原が身を投げたという淵を眺め、落涙したとの評が記され、刺客列伝の評では、荊軻等5名の、目的達成の有無にかかわらず、志を貫いた生涯に対する賛意が静かに示されています。こうした人選、評の中に、不遇、困難に抗い、史記編纂の大業を成し遂げた司馬遷の思いが偲ばれる気がしました。他方で、張耳・陳余等々の列伝では、春秋に義戦なしという言葉が自ずと頭に浮かぶような、むき出しの権力闘争の姿が粛々と叙述されています。あざなえる縄のように、理想とリアリズムが記されているのが魅力的でありました。 2023/03/15