出版社内容情報
中国古代の法家思想の大成者とされる戦国末期の思想家韓非とその継承者の論著の集成.人間とは自分の利益を追求する存在であるという非情な人間観から,歯切れのよい文章で,法律・刑罰を政治の基礎だと説いてゆく.秦の始皇帝の法律万能の思想こそ,この法家思想であった.また,伝説・寓話に満ちた書としても有名である.付・索引.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ビイーン
28
韓非子にある老子についての解説は、道家と法家が思想上相容れないと思い込んでいたせいもあり新しい発見だった。内儲説にあるエゲツナイ説話の多くは人の本性を暴き出している。韓非子では人間世界は綺麗事だけでは治まらないものとして、冷徹に人の行動心理を見ている。なかなか興味深い。2019/02/24
wiki
17
「安危在是非、不在於強弱、存亡在虚実、不在於衆寡」(191p)、「明主堅內、故不外失」(192p)、「時起有所利、其尸主之、有所害、必反察之、是以明主之論也、国害則省其利者、臣害則察其反者」(310p)。とくに三つ目は非常に大きな武器になるなと戦慄する。前提として利害で全ての人間は動く(それ以外で動く者は捨象する)、とかんがえるならば、であるが。事実、利害のみで動く人間は多い。守りの人生に入るほど、この傾向は強くなるであろう。裏の裏を掻くような奸智の世界では心してこれを考える必要があると背筋を伸ばす。2023/10/22
ロビン
15
他家の思想も多少入り混じりつつ、どこまで韓非子の書いた部分なのか怪しさもありつつの説話が大量に載っている。誰をどこまで信用したらいいのか・・生き馬の目を抜く様な戦国の時代、権謀術数飛び交う宮中で君主が安定した統治を行うことは至難であったろうし、臣下が自分の身を守り君主と民衆のことを考えながら献策して生き残ることもまた難しいことだったのだろうと、げんなりさせられる。それなりにではあっても、相手の言動の裏の裏まで読んで身を処していかなくてはならないことの少ない平和な世の中って、本当にありがたいものである。2025/02/17
ゆうきなかもと
13
第一冊よりも読むのに時間が掛かった。最初2篇は「老子」の解説のような内容。法家思想の源流には「老子」があるのだ。「老子」の実用的解釈と言えると思う。「説林」2篇はあまり印象にない。その後の「観行第24篇」から先が、実践的なリーダーシップ術、マネージメント術、もっというと権力掌握のための権謀術数など、大変興味深い内容になっている。君主は感情を表に出してはいけないらしいよ(●´ω`●)2020/01/29
明智紫苑
12
楚王に寵愛されていた鄭袖って、本当に卑劣極まりない嫌な女だな。しかし、当時の女性の立場からすると、この人自身は自らの行動を「正当な努力」だと信じていたのかもしれない。いずれにせよ、こういう女の存在こそが女性嫌悪の象徴なんだな。2017/05/20