出版社内容情報
勧学篇に始まり堯問篇に終る荀子の全思想の記録.彼は性悪説を主張するが,その説くところによれば,人間は放任すれば乱れるからその悪である性を矯正し,世の混乱を防ぐために伝統的な教,即ち「礼」を学ぶことが必要であるという.原文読み下しと口語訳とを併せ,その思想を広く一般に理解できるようにした.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
16
諸子百家の一、「性悪説」の荀子。性悪説と言っても、「小を積んで大となし、志を専一にせよ」等、人為を重視し後天的に努力や研鑽によって自分を教育していくことの重点を置いている教えというだけで、「人間はそもそも利己的でどうしようもない」的なペシミスティックな匂いは全くない。人間の営為への信頼がある。また「礼」による秩序の形成も重要視している。後半は君主による国家の治め方をかなり具体的に細部にわたって書いており、暴力や恐怖ではなくあくまで徳による統治を第一としているその王道政治論は、リーダー論として有益であろう。2025/02/12
記憶喪失した男
13
真面目にやれ、真面目にやれというだけで、何ら得るところがないな。だが、四書よりはマシな言説をいっている気がする。四書の時代より時代が新しくなったので、いうこともちょっとはマシになったのかもしれない。性悪説の記述は下巻にある。2017/03/23
浦
12
性悪説として高校教科書に載る荀子。儒教だったのか…。後天的に人が君子となるという考え方のため、自己啓発書みたいな感じだ。儒教系はどうも理想論という感じで、あまり馴染まない。かつての日本はこれを本気で信じ過ぎたのかもしれない。今の日本は、商売人ばかりになっていて荀子の説くところから遠く離れ過ぎたのかもしれない。2018/02/23
wiki
11
性悪説と聞いたが、法に従い、それを体現する人に師事し、"礼"が自然の振る舞いとなる程に訓練を受ける事で誰でも聖人のごとくなる、と説いたのが趣旨。「君子も生まれつき異なるには非ず、善く物に仮るなり」(10p)、「人の生まれつきは固より小人なり、師なく法なければ則ち唯利を見るのみ」(62p)と語る通りで、人間の可能性に着目した点は炯眼。注目点は「可とする所のもの異なりて知と愚と分かるるなり」(179p)とあり、何を「良い」とするかで知者と愚者の違いがあらわれる、と。ただ、この価値基準の根本は明かされていない。2024/01/31
翔
9
学を身につけろ、ここで言う学は礼のことだ。そして礼を重視し、それを国家運営にも反映するべき。みたいな話が主で、論語などと同じ形式の発言集となっている。基本的には現代の国家運営にも通ずるところがあるように感じるし、理想的でもあるように思う。こういった考えの政治家なんかが力を持った政治を見てみたいなと思える。それが成功するにしろ、失敗するにしろ。2022/10/08