出版社内容情報
戦後,評論に創作にせきを切ったように目覚ましい活躍ぶりを示した吉田健一(一九一二―七七)のデビュー作.どういう国土と人間が英文学を生み出したのか,と説きおこし以下チョーサーから二○世紀初頭まで英国五○○年の作家と作品を縦横に論ずる.行文から伝わるそのみずみずしい感性と先鋭な鑑賞力が読者を圧倒する. (解説 高松雄一)
内容説明
戦後、評論に創作にせきを切ったように目覚ましい活躍ぶりを示した吉田健一のデビュー作。どういう国土と人間が英文学を生み出したのか、と説きおこし、以下チョーサーから20世紀初頭まで英国500年の作家と作品を自在に論ずる。
目次
1 英国と英国人
2 チョオサアとマロリイ
3 エリザベス時代の文学の成立
4 シェイクスピア
5 形而上学派の詩人たち
6 英国の宗教文学
7 十八世紀の文学、―英国の小説
8 浪漫派の詩
9 十九世紀の文学
10 その後
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
12
2500冊目。吉田健一のデビュー作。『ヨオロッパの世紀末』に通ずるものがある。イギリスに留学していたのに、結構、貶すのが良いところだと思う。カトリックではなく英国国教会を受容している点において、大陸に先んじて神の精神が異なっているのが文学性に表れているらしい(英文学を読んだことがないのでわからない)。シェイクスピアくらい読んだ方がいいのか?2023/10/31
うた
9
英国における四季とそれに対する英国人の態度、精神性から、英国文学を読み解く。読んでいて、吉田さんが小説よりも詩に重きをおく理由が納得がいくようになっている。つまるところシェクスピアの十二夜が英国の春夏秋なら、リア王は半年にもわたる英国の冬なのだ。あと英文学よりも仏文学のほうが日本人の態度に合っているというのは、実感としてわかる気がする。2018/06/23
うえ
8
18世紀、まだ英国人は政治上の自由と原始的な欲望の満足とを区別できず、生活感情は粗暴で健康なものに溢れていたと。「世相の裏面が…ゴヤを凌ぐホガアスの絵である。また、フィイルディングの奔放な描写がこの時代に与えられたその典型的な表現であるならば、スタアンはこの生活意欲に逆説的な、時には異常とさえ思われる洗練を加える快感に駆られていた…リチャアドソンは彼らに対して、清教徒の伝統がいかに根強いものであるを示している」失楽園の主人公サタンなのは「ミルトン自身が…サタンに最も共鳴してこの詩を書いている」からとは!2021/01/12
ヴェルナーの日記
8
英国文学をフランス文学と比較しながら、話を進めていますが、著作者の主眼は、英国人という気質・性格・思考等といたものを歴史の変遷を通しながら、如何に変容していったのか、ということを英国の文人たちの戯曲・詩等を取り上げながら、深い洞察をおこなっている。2013/01/16
T. Tokunaga
6
これを読みながら何箇所で嘆息したことだろうか。わたしが慣れている英文学原書の読み方が吉田の影響を受けているのか、原書で英文学を読むのが読書の30%以上を占めると読書が変容するのかはわからないが、座右の書としたいくらい、よくわかる。2024/03/01