出版社内容情報
幕末の下級武士の家に生れ育った母千世の昔話をもとに,武士の家庭と女性の日常の暮らしを女性の眼で生き生きと描き出した庶民生活史.動乱に明け暮れる水戸藩で女性たちがどのような躾を受けて暮していたのかが,巧みな筆致で描かれる.女性解放運動の優れた思想家であった著者による滋味溢れる生活史・民俗史. (解説 芳賀 徹)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
40
現代でもキャラクター化される幕末の英雄や志士の他にも市井の生活や維新の暗黒面があった。過去は圧縮され、自分達の時代の変化が大きく見えてしまうが、そうではない。一世代違うと社会ははっきりとした変化を示す。それは、幕末から明治でも平成から令和でも同じ。幕末に起きた水戸藩内の粛清、家族まで巻き込んだ残酷な刑罰、比較的自由だった離婚や再婚、男女とも教育のレベルが高かったことなど興味深い事実が母親の話を聞き書きするという形で生き生きと語られる。初刊は先の大戦中。にもかかわらずこのような記録が書き残されたのは貴重。2022/10/05
musis
25
山川菊枝の母親の、下級武士の家庭における体験を綴ったもの。女性だけでなく、一般的な生活の様子も書かれている。今の生活から見ると大変だと感じる部分も多い。初めて知ることが多く面白かった。客が来ても座布団は出さない、女性は髪を自分1人で結う、など。現代の人の生活も、何百年も後の日本の人たちに、なかなか大変だけれどやっぱり美しい、とか言われているだろうか、想像してしまう。幕末の水戸藩の荒れた様子も描かれている。子供が首を落とされてしまったり、血生臭い。牢の中で最後まで子供に勉強を教え続ける母親。尊敬した。2014/08/04
はる
23
家本。買ったまま半年くらい置いてあった本を月のきれいな夜に読む。武家の女性や子どもの生活が鮮やかに眼に見えるように描かれている。まるで、親戚のおばさんに昔話を聞いているような気持ちになる。「三つでは水を汲み初め、四つでよう火を焚き付け、五つでは糸を取り初め…」の数え歌のように、身体を動かさなければ暮らせなかった時代。紡ぎ、織り、縫う。そして時代が動き、「子年のお騒ぎ」以降は悲惨な話題も多い。水戸天狗党の話や、「恋歌」朝井まかても読んでみようと思う。2014/09/08
umeko
19
幕末、水戸藩の武家の暮らしぶりが、手に取るように感じられた。大きな歴史の流れの裏にある、こういった生活感溢れる歴史も非常に興味深い。2019/06/28
シルク
16
色んなところで「これは面白かった」と絶賛されていて、いつか読もういつか読もうと、ずっと思ってた本。パッと思いつく所では、わたくしの大好きな漫画『ちょっと江戸まで』のあとがきでも、作者の津田雅美さんが「めちゃ面白かった」と書いていた。いやー。。うん、はっきりキッパリ、面白かった。そうか、山川均の妻なんだー。わたくし的には、どこが特に興味深かったかというと、「子年のお騒ぎ」の章だ。「子年のお騒ぎ」とは、幕末に、水戸藩で起こった内乱であるとのこと。その際、色々な人が関わり、多くの人が罪を問われたのだけど、→2022/03/05