出版社内容情報
飄逸と反骨で知られ,一貫して民衆の弁護士であった山崎今朝弥(一八七七―一九五四)の痛快無比の奇文集.自伝的エッセイ集『弁護士大安売』と関東大震災時の朝鮮人虐殺事件等への批判の書『地震憲兵火事巡査』等から新たに抜粋編集した本書は,社会運動史の貴重な記録であり,特に震災時の虐殺事件を助長した官憲を痛罵した表題作は圧巻.
内容説明
飄逸と反骨で知られ、一貫して民衆の弁護士であった山崎今朝弥の痛快無比の奇文集。自伝的エッセイ集『弁護士大安売』と、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件等への批判の書『地震憲兵火事巡査』等から新たに抜粋編集した本書は、社会運動史の貴重な記録であり、特に関東大震災時の一連の虐殺事件を助長した官憲を痛罵した表題作は圧巻である。
目次
1 自伝
2 弁護士大安売
3 東京法律所を去り、平民法律所に入り、上告専門所を興し、実費特許所を始めたる理由
4 平民大学圧迫事件
5 尾行事件の保釈願
6 山崎今朝弥懲戒裁判に付せらる
7 地震・憲兵・火事・巡査
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
73
明治〜大正〜昭和を生きた、変わり者弁護士の自伝や書簡、裁判文書を集めた本。言論の自由が未確立な時代に、権威権力に対する反骨精神と、民衆の弁護士としての矜持を、ユーモアとウィットでくるんで戦った個人の記録として面白い。電話がないので勝手に近所の肉屋の電話番号で営業して怒られたり、「弁護士大安売り」の広告で問題になったりと、笑えるエピソード満載。しかし、関東大震災直後の戒厳令に続く朝鮮人排斥、社会主義者迫害に対し、混乱のドサクサで本当に怖いのは憲兵、巡査や自警団であることを怒りを込めて警鐘を鳴らしている。2014/12/27
keroppi
63
岩波文庫「ことばの贈物」で、この本に興味がわき読んだ。明治、大正、昭和を生きた反骨弁護士。こんな人物がいたのかとびっくり。巻頭にある晩年の写真を見て、この人の奇行ぶりがうかがえる。「弁護士大安売」と広告を出したり、立小便で事件を起こしたり。滑稽なだけではない。一貫して民衆の弁護士であり、関東大震災での朝鮮人や大杉栄等の虐殺について怒り狂っている文は強烈だ。タイトルの「地震・憲兵・火事・巡査」は、ここから来ている。2020/07/27
双海(ふたみ)
22
痛快無比の奇文集。アメリカに貴族制度がないと知るや、「米国伯爵」を自称する。自伝には、「幼にして既に神童、餓鬼大将より腕白太政大臣に累進し、大いに世に憚らる」云々とある。「腕白太政大臣」って・・・。2015/05/13
壱萬参仟縁
14
普通に言うなら、憲兵=雷、巡査=親父だけども。3頁の晩年の著者の写真。とても気さくな感じの人物像を提示している。元祖狂という悪癖を吐露する(63頁)。「どの道、訴訟や裁判は費えの事、損の事、望ましからざぬ事」(92頁)。それで、健康を破壊されたとしてお金では解決しないのだ。不可逆的で取り返しのつかないことを企業は平気でする。健康はもう帰ってこない。その重大さを未だにわからない人たちがいて困る。「生身の身体から病気を絶やす事は到底出来ません」(92頁)。そうだ。『平民法律』は共感。庶民が法を学ぶ意義は高い。2013/09/01
isao_key
10
米国へ遊学したが、サンフランシスコで皿洗いをしながら勉強したのでベースメント大学卒だの、米国に爵位がないのを知りながら、自ら米国伯爵と名乗ったり、個人雑誌『平民法律』を「平民大学」と呼び、その読者を平民大学生と人を食ったような奇文奇行で知られた山崎今朝弥。弁護士となったいきさつもいい加減で、18ヶ月の時間と、300円の金を費やしただけで、学歴もなく、小学校しかでていないというから驚きだ。ただ持ち前の反骨精神はすごい。関東大震災当時、世論が朝鮮人排斥で強まっている中、堂々と正論を吐いて朝鮮人を援護している。2014/05/29