出版社内容情報
九鬼周造の主要テーマの一つ「時間」に関する論考をまとめる。時間は可逆的か不可逆的か、時間はどのような構造をもつのか。
内容説明
1928年8月にパリ近郊ポンティニーで行われた二つの講演をまとめた『時間論』(原文フランス語、九鬼最初の著作)を中心に、著者の主要テーマの一つ「時間」に関する論考をまとめる。時間は可逆的か不可逆的か、時間はどのような構造をもつものなのかを明晰な論理をもって問う、九鬼独自の「永遠回帰」の思想。詳細な注解と解説を付す。
目次
時間論(時間の観念と東洋における時間の反復;日本芸術における「無限」の表現)
時間の問題―ベルクソンとハイデッガー
文学の形而上学
注解(小浜善信)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーぼー
46
文学自身もまた、歴史という時間に晒される。流れゆく時間の重圧に耐えた顕著な例をプルースト等に求め、文学を形而上学の俎板に乗せて時間的構造を明示する『文学の形而上学』は忠実なフォーマットでありながら、実に面白い。そしてなにより、九鬼がパリ講演で披露したかった東洋的永遠回帰とは、これが日本において実践の力によって保たれていることの表明ではなかったか。東京を破壊した大震災の直後に地下鉄建設は行われている。新たな大地震がこれを破壊しようとも、常に再生させることの意志、実践理性を九鬼の如く世界に示さねばなるまい。2017/02/19
ラウリスタ~
18
1928年にパリ近郊ポンティニーで九鬼がフランス人の聴衆に向けて日本的「時間」の観念などについて触れた講演などを元にした論文をまとめたもの。五七五とソネの比較や、ニーチェの永遠回帰と東洋的輪廻とか、今では当たり前に聞こえる内容は、九鬼のこれらの講演にルーツがあるのかもしれない。ページ数でいうと後半の5分の3は注と解説。注の中には、そこまで丁寧にするか?と思わなくもないものもあるが、読者層を限定できないからか。しかし真面目に受け取ってもいない永遠回帰についてようここまで書くな。2016/04/05
味読太郎
7
-現在出会っている私とあなたはかつて無限回出会ったのではなかったか-時間の本原的性質は一と他が同居し、流動するような永遠の今、川の上の舟に乗り流れるのでも反対へ盛んに漕ぐのでもなく、川辺にたって流れゆく水を見ている。過去現在未来の中で未来に重きを置き現存在に開示された世界を述べていくハイデガーは予科が目的の点を設定することから、やはり何か直線的な、達成を望まれるような拘束がある。純粋持続を言うベルクソンの方が心地よい。確からしい、のではなくより心地が良い。九鬼の時間論そして芸術、とりわけ文芸の詩、文学、、2016/04/20
うた
7
詩や俳句、小説に含まれる時間概念について。最初の二つの小論がぴしっとしていて面白かったかな。ベルクソンもハイデガーも未読なので、どのていど正統的な評論なのかはわからないけれど、芭蕉の句から時間を読み取るところは的を射ているように思います。2016/02/24
ミヒャエル・安吾
6
全ページの半分以上が注解と解説。「時間の観念と東洋における時間の反復」の「大宇宙年」の概念が、JOJO6部の特異点通過して全く同じ歴史を繰り返してるアレにしか思えなかった。2017/06/25