出版社内容情報
日本のキリスト教学の最初の記念碑的著作(一九〇八刊).ユダヤ教にはじまり,エルサレムの教会,ヨハネの福音書に至るキリスト教発生当時の歴史を,パウロの活動に焦点をあてて思想史的立場から叙述したものである.著者(一八七七‐一九五〇)のみずみずしい筆致は,今も読者に深い印象を与えずにはおかない.「パウロ」を併収. (解説 松村克己)
感想・レビュー
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nobi
73
1901年明治34年の出版で文語調。“基督”は漢字で“起源”というと歴史検証の書といった印象。が厳めしさは生命漲る言葉の渦によって霧消する。とは言え自らが信仰する宗教について語る熱さは、キリスト教の宗教における位置付けと特徴とを捉える強靭緻密で体系的な思索を阻害せずむしろ深める。イエスの迫害者であったパウロを、イエスの磔刑に失望した弟子達を突き動かしたものは何か。パウロが弟子達を超えて見出した普遍性は何であったか。特殊に見える宗教の誕生は、身体を持つ人間の生の根源に目覚めよ、との激しい促しであったと知る。2018/03/03
讃壽鐵朗
3
明治調の不思議な読みやすい文章2017/08/16
きゃんたか
2
キリスト教とは知よりも情。静よりも動。法則よりも意志。抽象性よりも具体性。三位一体のダイナミズム。共観福音書のイエス像とパウロのイエス像には齟齬があるらしい。その最終形態はヨハネの福音書とか。地上における「神の国」信仰が「キリスト」信仰へと。パウロ信仰とは「ある」という本質規定から「なす」という行為規定へのダイナミズム。プロテスタントはパウロ信仰への回帰。霊による時間の超越とは即ち永遠の命。2015/09/14
うえ
2
「パウロの事業を妨げんとあせったユダヤ人は間接に却ってそを助け、かくて主として異邦人より成れるキリスト教会はローマ帝国の到る処に起り、あらゆる障礙を排して日に月に隆盛に赴いた。これに反して「律法」を必要とする保守的のキリスト教徒の運は日に月に傾いた」「かくの如くユダヤ人イエスの宗教は、ユダヤ人の地盤にはついに栄えなかった。キリスト教は生まるると共にその属した国民より全く追われて、彼らが禽獣の如く蔑んだギリシャ人の手に帰した」2014/12/02
ふら〜
1
キリスト教の成立史やその特色についてコンパクトにまとめている。どういう宗教なのかを頭に入れておくのは必須教養の一つといったところか。2023/12/04