出版社内容情報
宋の文化は頗る優秀なもので、宋から現今までを一続きの近世とし、歴史学は単なる集積ではなく、事実の論理の体系であると主張する。
内容説明
下巻には近世史(宋―清)と最近世史(中華民国―中華人民共和国)を収める。宋では貴族が没落して庶民階級が興隆し、君主独裁制が確立した。著者は宋に発生した文化は頗る優秀なもので西洋文化にひけをとらず、東洋の近世文化は欧州の近世文化に影響を与えたと結論づける。また、歴史学は単なる事実の集積ではなく、論理の体系であるべきだと主張する。巻末には自著解説と自跋、年表、索引などを付す。
目次
第3篇 近世史(北宋・遼;南宋・金;元;明;清)
第4篇 最近世史(中華民国;国民政府;中華人民共和国)
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
40
科挙の答案は、試験官が受験者と気脈を通じて手心を加える弊害を防ぐため、別紙に謄写したものを試験官に渡す制度。姓名を糊で封じ、受験番号のみを表に現わす(糊名謄録31頁)。南宋の当面の問題は、戦争中に増大した累積赤字の解消(99頁)。朱熹は中級官僚の息子で、名山の武夷山中に室(しつ)を築いて読書にいそしんだ(102頁)。理想的な学問環境。物価高騰の災害を真向から浴びせられるのは、いつも民衆、特に細民(112頁)。これからの日本は大丈夫か? 2016/04/03
シタン
20
宋以降。宋からを近世としている点は師である内藤湖南と同じだが、著者はさらに中華民国以降を“最近世”と呼んでいるところが特徴らしい。宋の文化の重要性を強調し、多くのページを割いている。「歴史は繰り返す」ことの好例として、明清をそれぞれ宋元の繰り返しとしているところが面白い。だからこそ、繰り返しの中にある差異を味わいたい。このある種の停滞故に、遅れてルネッサンスが起こったヨーロッパに追い越されることとなる。上巻の感想で「何より面白い」と書いた総論に呼応するようなむすびと自跋があり、それらだけ読むのも良いかも。2019/01/25
coolflat
17
宋~中華人民共和国までの中国の歴史を扱っている。著者の時代区分で言えば、近世~最近世に当たる。やたら宋についての記述が多いと思っていたが、途中出てくる著者の主張を読んで思わず納得してしまった。要は、近世以降の中国の歴史の根本標準となるのが、宋代の歴史だということだ。さらに、なぜ宋代の歴史が根本標準になるかと言えば、宋以後の歴史には繰り返し現象が見られるからだ。例えば、宋(漢民族による王朝)→元(異民族による王朝)を一周期とすると、明(漢民族による王朝)→清(異民族による王朝)はニ周期目にあたる。2016/04/07
isao_key
12
下巻でも宮崎先生の筆はますます冴える。一般的な歴史書を読むより数倍は面白い。この面白さの要因は、先生ご自身の研究に対する揺るぎない自信と、それに裏打ちされた膨大な文献の読み込みがあってこそ。桑原・内藤の京大中国史学の伝統を受け継ぎ世界的水準までに高めたのは、先生の業績に他ならない。お一人で中国史20巻でも書くのに困らないだけの知識を有しながら、上下に巻でそのエッセンスを凝縮して選び抜いて書いているだけに間違いはない。先生は通説とされているものに対しても、必ず考証を加えて検討している。渾身の代表作といえる。2015/12/11
shimashimaon
6
諄諄縷縷とした講義は、著者自身が楽しみながら自身の歴史哲学に基づいて生み出されたことを知って、面白いのは当然と納得しました。日本史本と並行するように意図して読みましたが、一気に読んだ方が良いです。我が国の歴史を知る上で中国史を学ぶことは欠かせないと、以前よりも強く思うようになっています。それは世界史的視野に立って行わなければならない。夏季冬季と続けてオリパラの開催があったからか、中国や韓国の親日家あるいは知日家という人達の存在を意識する機会がありました。私も同じように彼らを知る者でありたいと思うのです。2022/03/14