出版社内容情報
大逆事件で非業の死を遂げた幸徳秋水(1871-1911)は、明治の自由民権思想の指導者・中江兆民(1847-1901)に、18歳の青年時代から、兆民の最期まで師事した。秋水による兆民の回想録は、思想家・秋水自身の形成を明らかにする。日本近代思想のドキュメントであり,明治文学の名作。「兆民先生行状記」など、兆民に関する随想八篇を併載。
内容説明
明治の自由民権思想の指導者・中江兆民(1847‐1901)と大逆事件で非業の死を遂げた幸徳秋水(1871‐1911)。秋水は、18歳から兆民に師事し、その死を看取った。秋水による兆民の回想録は、秋水自身の思想形成の記録。
目次
兆民先生(緒言;少壮時代;革命の鼓吹者 ほか)
兆民先生行状記
小文(故中江篤介君の葬儀に就て;夏草(泉州紀行)
小山久之助君を哭す ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
50
エフ文庫。誕生日の今日、この本の解説に書いてあることで私は救われた。幸徳秋水は中江兆民の人生を、基本的に失敗と受けとめている。革命家、政事家、商人に敗れ、文壇にも受け入れられることなく死んでいった悲劇の人生。しかし、兆民はみずからの失敗を笑い、団欒を楽しみ、酒を愛し(今、私も呑んだ)、文楽、義太夫を楽しむ余裕があった(167-8頁)。俺みたいな人なのかもしれない。「窮困し、尽(ことごと)く其蔵書を売尽すや(略)読むを楽めり」とある(40頁)。貧乏さは、豆腐のかけらに野菜の浸物は少し(89頁)に垣間見れる。2024/09/25
棕櫚木庵
21
1/3) 兆民のある伝記を読んで,兆民その人も印象的だったが,兆民を師と慕う人々の兆民への思いにも感動した.たとえば透谷の「兆民居士安くにかある」(短い文章で青空文庫で読めます).表面的には激しい言葉で兆民を批判しているが,その根底に深い敬愛の念があることは明らかだろう.そして,この秋水.秋水がここで描き出す兆民の言動の多くは,すでにあの伝記でも述べられていたが,初めて聞く話もあり,兆民の姿を彷彿とさせる.本書に描かれている兆民の姿から,突飛だけど,「坊ちゃん」を連想した.2024/02/13
NAGISAN
1
NHKの「100分de名著」で『三酔人経綸問答』を取り上げていたので読書。ルソーの思想を広めた人物としていつかは読みたいと思いながら、最近はルソー思想自体も下火になり、機を逸してしまった。漢文調なので読みづらいが、江戸末期から明治にかけて活躍された方の人生や思想・行動は面白い。本書は、弟子の幸徳秋水の手によるもの他であるが、時の政府に対峙した兆民が浮かぶ。土佐生まれで長崎・海外に遊学、明治20年の保安条例により思想家が東京から追放され大阪が中心になったこと、貧窮生活、堺の浜寺で逝去されたことなど。2024/01/27
うさえ
0
幸徳秋水と中江兆民の師弟愛に胸を打たれる一冊。漢文訓読調で綴られる文は、声に出して読みたくなる。なかなかお目にかからない漢語も多用され、調べると思いもよらない意味だったりして、予想外に楽しかった。また、校注者である梅森直之氏の巻末解説では、「士人的エトス」「文章経国」といったキーワードを手がかりに、二人の関係と差異が論じられており、非常に参考になった。自らの号「秋水」の使用を愛弟子に許した際の兆民の心配が、その後、残酷なまでに的中したことを、私たちは知っている。至誠を以て相対した師と弟子であった。2023/07/18