出版社内容情報
身辺の記事から同時代の人物,政治,文学,芸能を思うままに論じた卓抜な社会批評『一年有半』と,「余は断じて無仏,無神,無精魂,即ち単純なる物質的学説を主張する」――諸哲学・宗教への激烈な批判を通して展開する兆民思想の総決算の書『続一年有半』.喉頭癌のため余命一年半の通告を受けた自由民権運動の指導者兆民の遺著.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
4
はじめに「校注にあたって」を読んだところで、なんかあれ?と思ったのです。例えば兆民流の読みでルビをつけたことに対して「小中学校の先生方のご苦労に水をさすような振り仮名が振られることになった」とか、「漢語表記については、漢字になじみの薄い若い読者に代わり、校注者が辞書をひくつもりで」多く注記したとか、校注者がどういう思いをもってこの本に向かったかが、ストレートに出てるな、と。そして実際注を見てみると、語句の説明も懇切丁寧、出来事についても当時の時刻表から天気から文楽座の演目から緻密な考証を加える。すっごい。2016/10/27
rigmarole
2
印象度B。『一年有半』は随筆、続編では専ら哲学を論じており、両者はかなり異なった著作です。余命一年半の癌告知を受けてもなお執筆意欲が昂るとは、彼の気力には全くもって驚嘆します。これを支えるのは怒りか自己顕示欲か。『一年有半』には固有名詞が多く出てきて、更に、その日の兆民の行動や世の中の出来事など、あまりに仔細に亘る注を追っていったら読む流れが沈滞してしまいましたが、続編は内容も一貫しており、抽象的なのでむしろ読み易かったです。最期に至ってもなお霊魂の不滅を批判し科学主義的唯物論を強く唱えるというのも驚き。2014/12/25
山崎 邦規
1
中江兆民の晩年の著作である。中江兆民は経済にも明るいので、私は好んで読んでいたが、政治思想に関しては野党気質が充満しているので、あまり傾聴しない。驚くべきに、哲学でも一家言あって、自説を樹立しているほどだが、私の問題意識に脈づくような知見はなく、いわゆる哲学者の論争に加わっている様相を呈した、知識人の論議である。しかし、文章は第一級で、読んでいて面白い。私が採用したいのは、中江兆民の、政治ではなく、哲学ではなく、経済思想のような気がしている。2024/03/30
じめる
1
かっこいい。死に抵るまで攻撃の筆をはせんと欲す。とにかくクールだ。2013/12/17
yagian
1
幸徳秋水「死刑の前」 http://goo.gl/xlN6x を読んだ時にも思ったけれど、死を目の前にして無神論を滔々と主張しているが、私にそんなことができるだろうか?タフな人たちだと思う。2012/02/12