出版社内容情報
日本資本主義が一人だちする明治三十年前後.横山源之助(一八七〇―一九一五)は労働者・貧民に深い同情をよせ,実態調査にもとづくルポルタージュの数々を世に問うた.本書はその集成であり,工場労働者をはじめ職人・都市の極貧者・小作人等の生活が生々しく詳細に記録されている.明治期ルポルタージュの白眉. (解説 立花雄一)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
76
つい先日読んだ『女工哀史』に続くもの。明治から戦前の日本社会を理解するには必読の文献だが、しばしば書名を目にし、どこか読んだような気がしていた。日本人として読まないのは後ろめたい気持ちがする本の一冊。「女工哀史」は大正時代の紡績業に携わる女工の研究がメイン。本書は明治31年頃までに書かれた。富国強兵と中央集権、且つ人口が政府も困惑するほどに増え、本土から北海道へ、南米へと開拓民や移民が奨励され、戦争で民衆を死地に追いやる圧力があったような気がする。産業も貧困層を消耗品のように酷使する。2021/02/12
たつや
19
徹底した取材にて書かれた東京がまだ市だった頃の日本の下層社会のデータ集のような資料本といっても良いような、完成度の高い本です。舛添要一には是非、読んでいただきたい一冊です。挿絵も、江戸風情が残っていて、下町の長屋の暮らしぶりがよくわかります。この時代を舞台にしたドラマが見たいです。人情があっていいでしょうね。そして、今の自分が、どれだけ幸せか痛切に感じます。2016/06/02
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
9
購入は2005年、読了は2007年以前。明治31年に書かれた社会学の古典。著者・横山は日本の貧民を探訪してその実態を表し、後には労働運動に参加。生涯を貧民や労働者の救済に尽くした。今から思えば”上から目線”の感無きにしも非ずであるが、妻子を盟友・松原に托してまで身を投じた社会活動の価値はやはり不朽とせねばならない。内容としては、正に題名通り、東京の貧民の状態、慈善家、職人社会、手工業、鉄鋼業、小作人等が、付録として日本の社会運動がある。時代が時代だけに文章は大分読みにくい。顕彰すべきはこうした人々では?
Kinya
8
「昔は良かった・日本」幻想を妄信している皆さんは是非御一読を。格差・貧困問題は、21世紀になって突然生じたわけではないことの証左です。2016/08/07
刳森伸一
7
富国強兵の名の下に進められた資本化に取り残された人々やその社会を、見聞や様々なデータを用いて多角的に浮彫せんとする論考。下層社会を描いただけの単なるルポルタージュを超え、明確な問題意識をもって、貧困を社会問題として取り上げている。これが明治31年に発表されたというのは、文明開化によって貧民に対する見方もまた進展してきたことの所作だろう。今読んでも得るところがある。2020/12/13
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