出版社内容情報
幕末の大老井伊直弼(1815-60)は、彦根の部屋住み時代より文武諸芸に親しみ、茶湯に傾倒した。主客の心得を詳しく記した『茶湯一会集』には、その境地が示される。多くの茶書から直弼が学び抄した『閑夜茶話』を併収。
内容説明
幕末の大老井伊直弼(1815‐60)は、井伊家十四男に生まれ、「埋木舎」とみずからが名づけた彦根城下の屋敷で過ごした部屋住み時代より文武諸芸に親しみ、茶湯に深く傾倒した。「一期一会」の茶会に相対する主客の心得を詳しく記した『茶湯一会集』には、その境地が示される。多くの茶書から直弼が学び抄出した『閑夜茶話』を併収。
目次
茶湯一会集(茶湯約束の事 前礼;着服ならびに懐中物;露地掃除ならびに水;数寄屋掃除ならびに簾;道具取合仕付ならびに懐石取合;客参着・初度露・迎えの書;初入・主客挨拶;初炭手前中;懐石中・かよい・客給べ様;中立―腰懸の心得・中立中の設 ほか)
閑夜茶話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
陽麿(お陽さま麿やか)
9
井伊直弼は安政の大獄でイメージが悪いですが、有名な茶人でもあります。一度読んだだけでは学びきれないので何度か読み返していきます。2016/02/08
壱萬参仟縁
8
井伊直弼がこんな本を書いていることは知らなかった。暗殺された大老しか認識がなく、本著でどんな人か理解したかった。脚注があるので、なんとか理解できるが、難解な箇所もある。茶道以外にも、花も登場。池坊専応の口伝も脚注に(45ページ)。評者は茶道の作法すらなかなか体験もないので知らないが、日本人としては知っておかねばと改めて思った。諏訪の神事(208ページ)については、機会があれば大社の人などに尋ねてみたい。茶の文化については、講談社現代新書の谷氏の本がよかったのは改めて思い出した。本著もいつか要再読と思った。2012/12/25
くらひで
5
本書は茶事の作法について網羅したものであるが、客の招集の仕方や路地の清掃から始まり、こと細かに決まりごとを記している。このことが茶道が堅苦しく感じられる一因ではある。しかし、主客が一緒に会を催し、まさに一期一会。そこには、日本人らしい細やかな心遣い、おもてなしの真髄が見て取れ、茶事に限らず日常生活でも習得すべき作法であることに気づかされる。昨今の表面的なナショナリズムの風潮に流されることなく、このような日本の伝統文化や精神性の真髄を見直し、道を追求することが必要ではないかと思う。2015/03/10
ne_viderem
4
井伊直弼の茶の湯指南書。だけど、ただの指南を超え、最後は思想書のように、永劫に対峙する有限なひとりの人間が帯びた熱を、静かにその文体に刻んでいく。いちおう指南書であるので茶会を取り仕切る亭主の目線で、客も含めて心持ちや注意をあれこれこまやかに書き記す。で、茶会が終わった後の亭主のありようについて、「独座観念」と章立てこう書く。「主客とも余情残心を催し、退出の挨拶終れば、客も露地を出るに、高声で咄さず、静かにあと見かえり出で行けば、亭主はなおさらのこと、客の見えざるまでも見送るなり」2018/09/27
AR読書記録
3
茶道の知識経験はなく、あんまり関心もないな...とおもっていたけれど、『茶湯一会集』で相当興味がわきました。事前のお誘いから後日の礼まで、美意識とか教養とか鑑賞眼とか気配りとか礼儀とか、諸々のもののせめぎあい、っていうか、お互いに高めあう、そういう(いい意味で)張りつめた時間をともに過ごすってことみたいだと思えます。“人物”を判断するのにもとても有効そう。日本には“言わなくてもわかるでしょ”文化があると思っているけど、こういう、言葉でなく型による意思疏通の伝統があるから、なのかな、とか想像する。2014/01/27