出版社内容情報
「わたしは,十になった子供の頃から,やし酒飲みだった」――.やし酒を飲むことしか能のない男が,死んだ自分専属のやし酒造りの名人を呼び戻すため「死者の町」へと旅に出る.その途上で出会う,頭ガイ骨だけの紳士,指から生まれた赤ん坊,不帰(かえらじ)の天の町……
内容説明
「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった」―。やし酒を飲むことしか能のない男が、死んだ自分専属のやし酒造りの名人を呼び戻すため「死者の町」へと旅に出る。旅路で出会う、頭ガイ骨だけの紳士、幻の人質、親指から生まれ出た強力の子…。神話的想像力が豊かに息づく、アフリカ文学の最高傑作。作者自身による略歴(管啓次郎訳)を付す。
目次
やし酒飲み
私の人生と活動(管啓次郎訳)
解説(チュツオーラとアフリカ神話の世界(土屋哲)
異質な言語の面白さ(多和田葉子))
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
468
チュツオーラはナイジェリアに生まれ育ったようだが、本書は英語で書かれている。しかも、正統な(というのは少し変な言い方なのだが)英語からすれば、かなりに異質な語法と文体で。本書を味わうには、まずはアフリカ文学というくくりと思い込みを捨てる必要がありそうだ。この支離滅裂さを、まさにアフリカだからと思ってはならない。たしかに神話的な語りであり、通常の小説の文法を大きく逸脱しているだろう。プロットも一見したところでは単線的に見えかねない。私には、これは異世界から来た「まれびと」の混入の物語ように見えるのだが。 2019/06/06
のっち♬
139
やし酒飲みである「わたし」は死んだ専属のやし酒造りの名人を呼び戻すために「死者の町」へ旅に出る。アフリカの伝説や寓話を聞いて育った著者ならではの怪奇で幻想的な冒険譚。「頭ガイ骨」紳士、灰から生まれた半体の赤ん坊にはじまり、森林の奥地ではやおよろずの神が乱舞する。行く先々で恐怖に対峙する主人公夫婦を通して勇気、精神力、寛容などの徳目が讃えられていくが、奇抜さは不帰の天の町、幻想性は赤い町でピークに達してしまい、終盤は尻すぼみな印象。荒唐無稽な設定もろとも飲んで踊って流してしまえと言わんばかりの鷹揚さが潔い。2021/04/21
コットン
85
やし酒飲みの呪術師と妻が、死んだやし酒職人を探し求める摩訶不思議な旅でmarthaさんのおすすめ本。藤枝静男の『田紳有楽』にも似た幻想世界が味わえるが、よりハチャメチャな感じ!2015/10/18
sin
80
この作品の狡猾さを併せ持った純朴な語りは、いきあたりばったり、語られることの整合性はその場限りであり稚拙だが表現されるもの・こと・ありさまの創造性が自分たちにはないアニミズムに満ちていて興味深い有様を描き出している。この物語は文章として読むのではなく、例えば深い森の中で夜、このような語りを聞かされたら、その荒唐無稽な様が自分たちを侵食する外の世界を強く匂わして存在の不可思議な有様を再認識させてくれるのではないだろうかと強く思えてならない。2014/10/10
らぱん
74
どうしてくれよう。なんて面白い。大まかには神話的な地獄巡りで自らが神だと名乗る男のけったいな法螺話だ。珍妙な無数の小噺の集合が物語になっており、小噺自体もその中の小ネタも独創的でかなり面白く時に大笑いできる。計り知れない奇天烈な法則が世界を支配しているようで、伏線らしきものがまったく回収されなかったり、一見どうでもいいようなことを深追いしたり、突き抜けたおおらかさが素敵だ。闇鍋か福袋のような、なんだかわからないものがいっぱい詰め込まれたワクワクドキドキのファンキーな口承文学。ビバ!アフリカ!と叫びたい。↓2019/10/05
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