内容説明
美しき無神論者に成長したリンダルは、服従へとつながる結婚を拒絶。エムはひとり農場を守る。広大なケープ植民地に満ちる閉塞感、それに抗う気高くも絶望的な営み。永遠、自然、人間の意味を真摯に問いかけ、イギリス本国に鮮烈な印象をもたらした珠玉の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
64
「男性のためなら二言、全人類のためなら三言語るけれども、女性のために一言でも、ものを言える男性はいないわ」美しい無神論者に成長し、服従へとつながる結婚を拒絶するリンダルの姿には著者自身の思想が色濃く投影されている。もっとも、周囲から浮いた彼女しかり、登場人物たちは「自分と違った精神の持ち主の経験に共感を持とうとする」心の広さを(著者同様に)持ち合わせていない。結局悲劇はそこから生まれるのだ。20代前半にして遥かな大地に息づく人々の暮らしをここまでこまやかに写しとった筆致は、著者の早熟さを証明するに余りある2018/11/12
ラウリスタ~
7
下の特に前半は神がかった出来。カラマーゾフの大審問官や、ジョイスの若い芸術家の肖像にも匹敵する断片がある。物語の筋とは独立した断片ではあるが、それだけでこの作品の価値を数段あげている。その一章だけでも読んで欲しいほど。2011/12/31
壱萬参仟縁
5
「人生は、僕の首の根っこをつかみ、違うものをいくつか見せる」(33ページ)。選択の判断を時に誤るのが人間。リンダルの台詞で、「後悔や泣きごとは、あの世にとっておけばよい、この世は短いのだから。失敗することによって、人生を深めることができる。失敗は役に立つもの」(181ページ)は深い人生訓。農場でいるときに本を読むのがよかった、と述懐される部分がある(274ページ)。都会の孤独を農場で共同体の中に身を置いて学習することの意義が問われる。宮沢賢治の羅須地人協会のようなイメージを受けた。農学とは農業と文学かも?2013/01/13
tona
2
イギリス小説における「最初の完全にまじめなフェミニストのヒロイン」を世に示したと言われているリンダル。天使的イメージを持ちながら、彼女にとって家庭への服従を意味する結婚を拒否する。結婚を拒否しながらも、自分を征服せんとする男に惹かれるなどアンビバレントさを兼ね備えるリンダルだが、自分の美しさを掌握し、それが男性にどのように求められ、消費されて行くかを滔々と語るなど、非常に魅力的なヒロインだった。南ア版『嵐が丘』といった印象。2014/03/28
Akihiro Nishio
2
上巻は南アフリカの田舎の農場だけを舞台にした小さな物語だったが、幼なじみの女の子が都会の学校に行ってから物語が急展開。彼女がフェミニズムに目覚めて小説の主題が精神的なものに変わった。そして最後はみんなが不幸になった。素朴な田舎生活と、不幸な顛末を迎える彼女のどちらが良かったのかわからないが、彼女が小説の中で輝きまくっていたのは確かである。2013/10/13
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