岩波文庫
失われた足跡

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  • サイズ 文庫判/ページ数 467p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003279816
  • NDC分類 963
  • Cコード C0197

出版社内容情報

大都会で虚しい日々を過ごしている音楽家が、恩師からインディオの幻の原始楽器を探しに行くよう依頼され、オリノコ川上流へと旅立つ。大河を舟で遡る空間の旅は、20世紀の都会から中世風の町へ、さらには旧石器時代にも等しい集落へと時間を遡る旅でもあった。《魔術的リアリズム》の創始者の一人カルペンティエル(1904-80)の代表作。

内容説明

大都会で虚しい日々を過ごしている音楽家が、幻の原始楽器を探しに南米の大河を遡行する。むせ返るほど濃密な南米の“驚異的な現実”を遡る空間の旅は、現代から旧石器時代へと時間を遡る旅でもあった―。現代ラテンアメリカ文学最高傑作の一つ。一九五三年刊。

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感想・レビュー

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のっち♬

128
大学の依頼により、音楽家が幻の原始楽器を求めて南米の大運河を遡行する。殆どの地名や登場人物に具体的な名称が与えられていない、話の普遍性を際立たせた作風。運河と共に時代も遡るかのように光景は原初的なものへ向かい、主人公は独自の文化と大自然が奏でる壮大なシンフォニーに感化されてゆく。空間や時間軸やエピソードが縦横無尽な広がりを見せており、本書は人類の「失われた足跡」の探索行であると同時に主人公の自己発見の旅と言える。似非インテリの愛人の同伴が、あらゆる感情がさもしくなった現代都会との対比を浮き彫りにしている。2021/10/21

どんぐり

83
カルペンティエルの『この世の王国』に次ぐ2冊目。幻の原始楽器を求めてジャングルの奥地を旅する音楽家。ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『フィツカラルド』の世界にも通じるような話である。金鉱探しの山師、宣教師、薬草採取家、愛人の占星術師、現地の女ロサリオといろんな人間が登場する。密林を船で遡行する日々と語り手の主観的時間が縦横無尽に飛び交う点では、ガルシア=マルケスの『迷宮の将軍』にも引けを取らない。時代的な訳文の読みにくさに苦痛を感じながらなんとか読了。2020/04/22

nobi

80
アンティゴネー、教皇マルチェルスのミサ、エンタブラチュア、オクトエコス、マルトノ…、ギリシャ悲劇ルネッサンス音楽古典建築典礼書から電子楽器…まで、“わたし”の語る文学音楽建築は蒐集家めいていて心ときめく響きがあるのに、それを語る彼は苛立っている。が、止む無く赴いた南米奥地がその彼を変えて行く。熱帯のむせ返るような繁茂と腐敗とその中現在を生きる人々。作り物めいて見えた綿々と続く文体は、絡まる蔦、跋扈する動物、‹大高地›の朝の光にこそ相応しかった。現代の我々の前に“わたし”は太古の自然を言葉で現前させている。2017/07/23

やいっち

61
本作には、マルケスほどには浸りきれなかった。が、物語も終わりに近づこうかという辺りで、癩病に冒された人物が出てきて、個人的に(つまり、話の流れとはやや離れた形で)不意にどやされたように、物語に引き込まれていった。  この癩病患者は、当然ながら、人の輪からは離れた場所で隠れるように、息を殺すようにしてひっそり生きている。村の人々も彼らの存在はしっているが、隠れて生きることを容認している。だが、村の人々との接触は、決して許さない。  2014/09/25

やいっち

49
ある音楽家(作曲家)の創造の始原を求める物語なのか。生の根源に至る(かのような)旅をした……が、それでも叶わない。一回性の極である驚異に遭遇はしたのだが、それは再現性には馴染まない。楽譜には定着し得ない。芸術の真の顔を垣間見たかのような、驚異という天の恵みは常に変幻して止まないのだ。それはさておき2026/09/30

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