出版社内容情報
都会を捨て、アマゾンの密林の中で未開部族の「語り部」として転生する一人のユダヤ人青年……。インディオの生活や信条、文明が侵すことのできない未開の人々の心の砦を描きながら、「物語る」という行為のもっとも始原的なかたちである語り部の姿を通して、われわれにとって「物語」とはどのような意味を持っているのかを問う傑作。
内容説明
都会を捨て、アマゾンの密林の中で未開部族の“語り部”として転生する一人のユダヤ人青年の魂の移住―。インディオの生活や信条、文明が侵すことのできない未開の人々の心の内奥を描きながら、「物語る」という行為の最も始原的なかたちである語り部の姿を通して、現代における「物語」の意味を問う傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
231
2つの時間軸を持った物語が、独立して進行していく形式は『フリアとシナリオライター』などにも見られる手法。ここではそれが最後には1つの物語に統合化されていくのだが。ペルーの南東部、マヌー地域に生きるマチゲンガ族。そこの誰もが語りたがらない「語り部」をめぐる物語。そこで「語られる世界は、外の世界とは全く別の論理と世界観とで成り立っている。冒頭はリョサの学生時代にはじまり、25年後のマヌー再訪によって、物語は円環を閉じるのだが、その間にこの地域は激変する。しかし、この世界はそこに新たな語り手を生み出していた。2014/08/02
lily
129
まずこの魅惑のタイトルと表紙だけで買いでしょ⁈どんな異世界に連れて行ってくれるんだろうって思うでしょ?『陸空海』は観てたんだ。テレビを観ない私が。ナスDの鋭敏な語りと感受性とこなれたパフォーマンスも最高だったけれど、私達は真っ黒に顔を塗られないで済むし、虫に刺されずにして密林に導いてくれるのだから。きっと尊敬、共感の気持ちで寄り添えるから。野蛮人だからとか遅れているなんて呼べなくなるから。人間と自然の調和の流れに湿らされて。2019/07/22
ケイ
92
冒頭にある、書き手がフィレンツェで出会った写真。彼はそこで懐かしいものを見て、四半世紀前のペルーの友人のことを思い出す。顔に大きな痣を持ち異形のものの印象を与えるユダヤの彼は、マチゲンガ族の暮らし、五体満足で生まれぬ子供を殺す習慣、そこにいる語り部について語る。そして、大学卒業後に姿を消すのだ。彼の痣とマチゲンガ族への傾倒を絡めるように書いている。しかし、作者が真に語りたかったのはインディアン達の密林奥での動物や自然と同格に営む暮らしで、それを語り部の口を借りて書き残したかったのだと思う。2014/06/28
藤月はな(灯れ松明の火)
74
語り部によって紡がれるは動物と精霊と人の営みでもあり、天地創造の物語である。その物語は自然と共生するが故の残酷さと寛容さを伝え、語られる人々はどの登場人物よりも生々しい。そして虚構が実体となるのではなく、消えゆく可能性があった実体こそが虚構という形になって継承されていくということが分かった時はなぜか救われた気がしました。語り部に転生した、痣を持ち、ユダヤ人であるが故に孤独にならざるを得なかった友人に幸あれ。2014/07/04
かおりんご
64
読んでいるうちに、自分があたかも密林の中にいて、目の前にいる語り部から民族の歴史や神話などを聞いている気持ちになった。白人に脅かされて生きてきたのは、インディオ達だけではなく、ハワイアンも同じ。語り部はいないけれど、フラのチャントで自分たちの歴史や神話を後世に伝えている。なんだか似ているなと思いながら読み進めた。と、いうことは、フラを習っている私も、語り部?文明化、自然破壊、労働の搾取、いろんな問題に疑問を投げかけているのもよかった。2014/09/23
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