出版社内容情報
ササーン朝がアラブの侵攻で倒れて数世紀，異民族支配に対抗して書かれた民族叙事詩「ペルシャ建国の物語」．今も，誰でもその1節を暗誦することができる，と言われるほどイランの人々に愛される同書の名場面を抄訳．
内容説明
ササーン朝ペルシャがアラブの侵攻で倒れて三百数十年、１１世紀初めにアラブ中央政権に対抗して書かれたペルシャ民族高揚の叙事詩―神話・伝説・歴史時代の三部構成からなるペルシャ建国の物語。今も、誰でもその一節を暗誦することができる、と言われるほどイランの人々に愛されている『王書』からその名場面を抄訳。
目次
第１部 神話の王たちの時代（カユーマルス王（在位三〇年）
フーシャング王（在位四〇年）
タフムーラス王（在位三〇年）
ジャムシード王（在位七〇〇年）
ザッハーク王（在位一〇〇〇年）
フェリドゥーン王（在位五〇〇年））
第２部 英雄伝説の時代（ナリーマン家のサーム；白髪のザール；英雄ロスタム；悲劇のソフラーブ；王子スィヤーウシュ；王子イスファンディヤール；ロスタムの最期）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
56
ペルシア最大の民族叙事詩、の抄訳。平凡社東洋文庫も抄訳ですが、後者が英雄ロスタムの生涯を中心にまとめていたのに対し、こちらは神話部と英雄部の出来事が中心となっています。本書のほうが敵国トゥーラーンとの関係など全体の流れを理解しやすく、また世は儚いもの、善も悪も栄華も富も永続するものはなく、人は誰も廻る天輪の示す運命から逃れることはできないという主題が分かりやすくなっているように思います。反面、ロスタムをはじめとする英雄たちの血の沸き立つような活躍が削られてしまううらみはあるので、東洋文庫と合わせてぜひ！2019/11/08
マウリツィウス
25
古代ペルシャ叙事詩の秘跡とはインド＝ヨーロッパ語族由来の詩韻律を明晰に確立することで覇権を総べてきた。西洋諸国における優先課題でもあった英雄思想神話化はキリスト教聖人伝説に代表されるように宗教像にすら影響するも、古典神話に属さない。つまり純神話界を認めた点においてこの書は成り立ち宗教と象徴の寓話性を理解浸透している集合テクストの暫定形、古典／神話の分類性を拒んだ《王書》は事実上《神話権威性》を否定することで《国家機能システム》と化した痕跡を踏まえるとキリスト教伝説との明確相違立場こそが反・一神教域を成立。2013/07/03
おせきはん
22
知力、体力ともに卓越して絶大な権力を保持していても、最後は運命に従わざるを得ず、必ずしもハッピーエンドとはならない、古代ペルシャの王の波瀾万丈の人生の物語を楽しめました。人の美しさや王宮の豪華さの表現ぶりには土地柄が感じられました。2020/04/01
彩菜
21
東洋文庫から引き続き。物語は変わらず運命の気まぐれと生の儚さを歌いますが、それでも人々にとり、生は美しいものであったように思います。殺され行く王子は言います。…殺さないで下さい、甘美な生は善なのですから、と。身を飾る宝石や咲き乱れる花々は富や愛の象徴としてだけでなく、生を甘美にするものとしてもあり、王や騎士の持つ魔力や強さは、生をどこまでも高めた顕れなのかもしれません。そうして彩られ高められた彼等は、戦場にあっても悲劇にあっても何処か明るく輝かしく、その存在自体が語るようです。「甘美な生は善なのです」2020/02/10
ホームズ
16
神話時代の王たちの話は『アルスラーン戦記』の中で語られた伝説と同じでした。英雄の時代になってからの物語は面白いな～。サーム、ザール、ロスタムの話が良いな～。ロスタムとソフラーブの悲劇が気に入った（笑）2012/06/27
