出版社内容情報
焦土と化した戦後ポーランドの混沌とした状況を4日間の出来事に凝縮した長篇小説(1946).政権側要人の暗殺命令を一人で引きうけて射殺される一青年の悲劇を中心に,社会各層の混乱と矛盾が鮮やかに描きだされる.作者(1909-83)が脚本に参加したワイダの同名の映画の原作.題名はポーランドの詩人ノルヴィッドの詩の一節による.
内容説明
その三日後の5月8日、テロ団の一員マーチェクは、党の大物シチューカの暗殺を決行するが、街頭で保安隊のパトロールに出会い、射殺された。この日は、ドイツ軍司令部代表が無条件降伏の正式文書に調印した日であった…。ワイダの同名の映画の原作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
命に関わる大変な危機に遭遇したとき、人はその本性を暴露される。それは普段の態度から幾らかは想像できることもあるが、全く想像もつかない一面が露呈することもある。嵐のような破壊のあとのポーランドと痛めつけられた人々の心の中に、無惨なる灰に埋もれながらも輝くダイヤモンドはあったのか。この作品のなかでは、生き残った人々の中にダイヤモンドは見えないようなのだが。それこそが、ポーランドの悲劇なのか。2016/10/13
藤月はな(灯れ松明の火)
19
生き残るために人間性を捨てなければならなかった。そのことは、日常で些細で大切な一時を味わえば、味わうほどに過去の自分によってできた今の自分を断罪してくる。そのためにシチューカやマーチェクの日常やそれに付随する感情が胸に迫るのだ。それにしてもポーランドがやっと独立を果たした日に今までの選択の積み重ねが無になってしまうなんて、なんという皮肉なんだろう。2015/03/10
もといま。
18
戦争によって、家族が、普通の人がめちゃくちゃになってしまうこと。読んでいて苦しくなった。映画も観てみたい。2015/05/26
ザビ
15
【残るはただ灰と、嵐のごと深淵に落ちゆく混迷のみなるを】人生は一つ、古い生活も新しい生活もないと気づく殺し屋マーチェク。「戦争の第一日は平和を、平和の第一日は戦争を帳消しにする…これが人生」戦時の悪は平和の下では裁けないと主張する判事コセーツキ。戦後混迷時のこの二人…ゴロツキと裁判官の生き方の対比が印象的。「その娘が好きになっちゃったんだ。俺はもう殺したりぶち壊したりするのは嫌だ。ありふれた、当たり前の生活がしてみたい」廃墟の灰の中で静かに輝くダイヤモンドは、マーチェクのこの言葉に詰まっていると思った。2023/01/10
ラウリスタ~
14
伏線回収をドキドキしながら待ちわびていると・・・て、それで終わりかい。あんまりに偶発的で散文的な結末。大掛かりな陰謀やらは子供だましで、そこにあるのはただなんとなく上(ってなんだ)から命令されるままに行われる引き金の往復だけ。戦争終結と同時に、さあ悪夢は終わりだとばかりにかつての収容所の「仲間」を元気に訪問する、元「労働監視官」にして平時は尊敬される判事の変わり身の早さがなんとも不気味。こんな下らないことに振り回されたということが信じられないくらいに、無意味なポーランドの混乱をまざまざと見る。2016/04/01