出版社内容情報
ヤコブセン(1847‐1885)はデンマークの植物学者・作家.その短い生涯に書いた6つの短篇を収める.「創作の本質とか,またその深さや永遠性について教えられるところのあった人は,ヤコブセンとロダンのただふたりだけである」とリルケは言っている.
内容説明
北欧の詩人ヤコブセンの短篇集。清新な印象主義的タッチで衝撃を与えた「モーゲンス」など、繊細にして色彩豊かな六篇を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
evifrei
17
デンマークの詩人・ヤコブセンによる短編小説集。具体的な物語より、感性に訴え、描写される風景・景色を通じて登場人物の心情を露にするという趣が強く、抽象的な作品が多い。全体的にフレスコ画を思わせる白みがかった色彩を感じる芸術的で美しい文体だ。『霧の中の銃声』『ベルガモのペスト』『フェンス夫人』が特に良い。中でも疫病の流行下の社会と蔓延る無神論を描き出した『ベルガモのペスト』は健康な人に鞭打たれるかの如き扱いを受けて逃げる病人の姿や、虚無感から放蕩に走る者の様など、宗教感を別にしても現在に通じるものがある。2020/04/27
アムリタ
12
何という孤独な魂たちの話だろう。 透き通った孤独は冷たいまでに熱く狂おしい。 すべては極まで行くと反転する。 凍りつくような孤独は、燃え盛る炎なのだ。 リルケはヤコブセンを愛した。 死にゆく者たちの愛と、生への憧憬を、生ける者として受けとめる器となり、運命の糸を辿るまなざしで死者に代わってなぞるように誘われる。 そのように魂はその欠片を生者に渡していくのだろうか。 2021/08/23
ひでお
6
初めて読む作家さんでした。詩人のことばらしい、美しい言葉でつづられた描写が印象的です。お話しはどこかモノクロームでその中にひとつ、明るい色が混じっているようなイメージ。様々な愛や死や信仰の形が描かれます。一番心に残ったのは最後に収録されている「フェンス夫人」でした。2021/10/21
カンジ
4
リルケおすすめの一冊。1953年発行。63年前。描写の美しさが本当に凄いです。まさに壮麗。詩人の眼はこれほどまでに細やかで表現力豊かなのかと少し怖いくらいです。自分の表現力がちっぽけすぎて笑えてしまうくらい。これを読んで、何かが変わるのかと思ったけど、正直よくわからない。暇な時間に、パッと読めるようにリルケみたいに手許に常に置いて、なんども読もう。原文だとなにかリズムがあるようだけど、まあそこは諦めましょう。2016/10/19
Y.Yokota
3
リルケの「若き詩人への手紙」に、聖書とともに常に携えているのがヤコブセンの本であると書かれている。短編小説のようで、表現の淡い美しさはやはり詩人としての才を感じずにはいられない。「フェンス夫人」が素晴らしい。 2017/05/28