出版社内容情報
アンデルセン(一八〇五―七五)の童話は,決して口あたりよい砂糖菓子のようなものではない.「私が書いたものはほとんどが私自身の映像である」と『自伝』のなかで述べられているように,どんな空想的な話のなかにも,作者の生きた波瀾の人生の一片が封じこめられていて,おとなであれ子どもであれ,読む者の心を強くゆさぶる.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
73
気の晴れない日々、子供の頃大好きだったアンデルセンならと手にとったのですが、え、こんな話だっけ・・・?邪魔者はあっさり殺して排除。美しい容姿こそ大事という身も蓋もない結論。ロマンチックなお話に仕込まれた「毒」にしばし呆然。一方、理不尽な力にささやかな幸せが押しつぶされていく哀しみや、ひたむきな強い想いで運命に対峙する強さ、人の愚かさ、そんなものを余すことなく描き、さらにはどんでん返しの妙、短編としての完成度。童話っぽい素っ気ない文章で描かれる世界の深いこと!読み継がれてきた作品は、やはりあなどれません。2020/05/19
きょちょ
25
グリム童話に比べて明らかに物語性が濃い。 それは、グリム童話がドイツの昔話や伝承を数多く集めたものに対し、アンデルセン童話は彼自身が創作したものだからだろうか。 内容も実に多彩で、寓話的なものもあればそうでないものもあるし、「幸福の長靴」は、童話というより普通の小説だ。 「親指姫」は、当初子供を欲しがった女性は親指姫が生まれてから全く登場しないという、童話の「不可思議さ」が残る。 「人魚姫」は、一途な恋を描いた名作。足の痛さをこらえて踊るところは何とも美しく哀しい。 ★★★2017/03/15
R子
13
短篇16本を収録。「小クラウスと大クラウス」は残酷なんだけど、小クラウスがどう頭を使うか気になってぐんぐん読んでしまった。「旅の道づれ」や「野の白鳥」も展開が面白い。“神様”のワードがたくさん出てきて、キリスト教圏の物語だなと感じる。「人魚姫」にはやっぱり胸が痛くなった。「ヒナギク」のような、日常のささやかな幸せと哀しみを描いた作品が好み。2018/08/13
マッキー
13
大人になって改めて読むと面白いし、また違った楽しみ方ができる。残酷で痛々しい話や、「人魚姫」なんかは子供向けの絵本には書かれていなかった描写も多くてこんな違うんだと思った。2015/08/23
アサギモ
10
人魚姫や親指姫なんか有名だけど案外きちんと話を知らないなと思い、何気なく手に取った本書。童話と聞くと子供の為のお話というイメージが強かった分、実際読んで見るとそのイメージは払拭された。優しさと悲しさ、希望と絶望、静謐で端正なファンタジーの中に、多くの生々しい現実的描写が映えており、語り口と中身の重さによっては時として背筋がゾッとすることも。ピリっと辛味のある、風刺の効いた結末から、心が洗われるような優しい結末まで、単純に短編小説として各話を楽しんだ。私的に「ヒナギク」が好み。読了後沈みましたが。2012/08/11