出版社内容情報
紺碧の空,灼熱の太陽,闘牛場にこだまする歓声.セビーリャを舞台に繰り広げられる,花形闘牛士フワン・ガリャルド一代の栄光と破滅.ドラマティックな展開と色鮮やかなスペインの風物描写で人気を博し,伝説の二枚目スター,ヴァレンチノ主演の作品をはじめ何度も映画化された文豪イバーニェス(一八六七―一九二八)の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
9
1908年初出。旧字体。動物を相手にする人間は凄いな。仕留師(マクドール)、銛打師(バンデリエロ)は見慣れない(48頁)。闘牛士(トレーロ122頁)。自分よりも若い親方の組下にゐて、妻子が食はせられ、小商賣(こあきなひ)でも始める貯金の出来る、足軽の一人扶持さへ稼げれば、日雇取りでも平気(121頁)。闘牛場(ブラーサ214頁)。ローマ式か、アラビア式(215頁)。兇賊は、金持ちが貧乏人を苦しめる話をしている(240頁)。ドニャ・ソールは、「物は遠くで見る時に眞の値打ちが分かりますの」(385頁)。相対化。2013/09/12
きりぱい
6
ストーリー展開より、たいそうな衣装の着け方だとか、そんなに儲かるのか!など、闘牛という世界に感心してしまう。貧しい少年ガリャルドは、血気盛んさで華々しく闘牛士デビューし、富も栄誉も手に入れるのだが、妻がいながら抑えがたい恋に溺れてゆき・・。何が印象に残るかって、闘牛の場面なのだろうけれど、繕われて引っ立てられる馬がもう哀れすぎて。世界大ロマン全集にも入っているこの作品、タイトルが何だかなあと思っていたのだけど、最後はすっかり、内臓がじゃりじゃりしそうなほどタイトルどおりに幕を閉じたのだった。2011/09/27
KUMAGAI NAOCO
2
何度も映画化されたスペインの闘牛士が主人公の小説。翻訳が旧字体なので、主人公フワン・ガリャルドや彼の家族の口調が物凄く雑な感じもするが、貧しい家庭で育った彼が頂点まで上り詰め、そして運命の女ドニャ・ソールに振り回され堕落していく様がまあ悲しい。彼の妻の名はカルメンだが、ビゼーのオペラのヒロインとは正反対の性格。(寧ろドニャ・ソールの方が近い) 闘牛は見た事はないけど、どんな雰囲気なのかが凄く分かる。2022/02/08
tekesuta
2
あらすじは従であり、主役は闘牛の克明な描写。1908年作だけどこの頃って馬は防護用の幕をかぶせられてないのね。びっくりです。闘牛畏るべし。2011/09/16
slowbird
0
スペインの地方都市の庶民の子が闘牛士となり、「天下第一の男」と呼ばれる国民的スターになっていく。財産ができ、上流階級との付き合いができて妖艶な夫人に振り回されたり、怪我で挫折したり、復活したりと、起きるべき出来事が展開される。だが世間での噂や新聞などのゴシップとは大きく違っている。闘牛を題材にした無数の変奏曲の一つなのかもしれないが、民衆の情念や生活に密着した様は現地臭さに溢れている。エキゾチズムなのかもしれないが、情熱的で屈折のあるヒーロー像は面白く、色あざやかでダイナミックな描写にも惹きつけられる。2025/03/17
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- 和書
- 魂に秩序を 新潮文庫