感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
19世紀スペインの作家の劇では亡霊がなんと二人出てくる。厳しく断罪する父の霊と、その娘ドニャ・イネスの優しくとりなす霊で、彼女こそは数々の女性遍歴のあとで主人公が今なお忘れがたく思い続ける女人であり、彼女に手を取られて最後に救済される筋書きは、ゲーテのファウストやワーグナーのオランダ人などの幕切れをも想起させる。常に移り気で、片っ端から誘惑しては捨てるのを繰り返す伝統的なドン・ファンではなく、〈永遠に女性的なるもの〉を見出して彼女に救われるというロマン主義の異性愛イデオロギーを体現したものと言えるだろう。2023/06/30
Nemorální lid
2
『わたしの声、わたしの心、わたしの夢はわが祖国の栄光をうたう』(解 p.195)という抱負を持つ作者だったからこそ、ドン・キホーテに次いでスペインに伝わるドン・ファンに民族性を見出し、これを取材した。19世紀スペインのロマン主義を代表する著者ホセ・ソリーリャは、そのような"新たなドン・ファン像"を詩的幻想を込めて歌い上げたのだ。劇を盛り上げるために「賭け」と「面目」を重視し、これを以て放埒に繋げる手腕にはなるほど驚いた。世俗的な中に宗教性の救済を対置し、乱行放蕩と徳義を両面に描く点も素晴らしいと考える。2018/10/03
葛
1
ホセ・ソリーリャ作 訳者:高橋正武 1949年12月15日第1刷発行 1974年5月16日第2刷改訳発行 2013年7月10日第4刷発行 発行者:岡本厚 発行所:株式会社岩波書店 印刷・製本:法令印刷 カバー:精興社 1844年作2024/05/14
takeakisky
0
救われるドン・フワン。回心するドン・フワン。それを阿弥陀仏のごとく慈悲のこころで救済する神。おやおや。この芝居のドン・フワンは、向こう見ずで怖いもの知らず、あっと言わせてやろうという性癖だが、旧来的な価値観、道徳心を持ち合わせていないわけでもないいいとこ取りな造形。だんだんいろいろなドンファンを読むのが楽しくなってきた。本家のセビーリャの色事師を注文。あとはバイロンかね。2022/10/06
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