出版社内容情報
登場人物の多くが小説『ドン・キホーテ』の存在を知っており,「前篇」を通読した者もいる.「後篇」の冒険はドン・キホーテ主従が小説に描かれることによって得た知名度を土台にしているという機智縦横の物語.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
332
本編には「ドン・キホーテ」前篇の愛読者だという公爵夫妻が登場し、彼らはキホーテ主従とともに小説内時間を生きることになる。また、この巻ではサンチョの積年の念願がかなって、彼は島の太守になる。そこで注目すべきは、彼があくまでも自分はサンチョ・パンサであり、断じて「ドン」と呼ばれることを拒否することだ。紋切型の格言の世界に生きるサンチョだが、この精神は潔くもあり、強固でもある。かならずしも近代市民社会の到来を予告、あるいは予言したものではないが、フランス革命に先立つこと200年、あるいはセルバンテスの慧眼か。2016/04/27
ケイ
103
前半とのドン・キホーテの雰囲気が違うのに不安を感じた後編の一巻だったが、二巻になってまたグンと面白くなった。これは前半で終わらず後半も読み続けてよかった。人のいいサンチョがようやく自分の土地を持つ。そして、ドン・キホーテの奇人ぶりを評価する人まであらわれる。さて、最終巻では何が起こるのか。楽しみだ。2015/07/31
藤月はな(灯れ松明の火)
96
前編2.3と対構造となる巻。騎士道珍道中を語るドン・キホーテらに矢鱈、親切な公爵夫妻。彼女らは自らの無聊を慰めるためにドン・キホーテらを自分が描いた脚本へと投じようとしていたのだ。前編の一芝居が「ドン・キホーテを正気に戻すための庶民の苦肉の策」ならば、後編は「ドン・キホーテの狂気を逆手に取った貴族の遊戯」なのだ。遂に島の領主となったサンチョ・パンサの見事な大岡裁きに天晴れ。特に食事を禁じる藪医者への罵倒は捧腹絶倒。また、読まずに上滑りの言葉で騎士道物語を批判する司祭に対してのドン・キホーテの批判も楽しい。2021/08/30
扉のこちら側
80
初読。2015年1148冊め。【78-5/G1000】前編に比べて後編1巻はあまりピンとこなかったけれど、この後編2巻になってまたぐんとおもしろくなった。ついに念願の島の領主にまでなったサンチョ。彼はドン・キホーテが狂気に取りつかれているときっと見抜いていて、それにつきあっていける稀有な人物。出版された全編を読んでドン・キホーテのことを知っている公爵夫妻というまたおもしろいキャラクター達が出てきて、要注目。【第2回G1000チャレンジ】2015/11/22
みっぴー
56
〈ドン・キホーテ5/6〉金にものを言わせ、ドン・キホーテとサンチョに壮大なドッキリを仕掛ける公爵夫妻。サンチョは念願叶って島の領主になります(もちろんドッキリ)。なかなかどうして上手く統治するサンチョ。実はお馬鹿なふりをしているだけなのでは…?と勘繰ってしまいました。しかしサンチョはやはりサンチョ以上でも以下でもなかった様子。好きなものを好きなだけ食べて好きなとき眠るのが、サンチョにとって一番の幸せなのですね。もうすっかり癒し系キャラが板についてきたと思ったら、ラスト一冊!2016/11/17