内容説明
今こそ聖杯グラダーレを返還するため司祭ヨハネの王国への道を切り開くのだ!―皇帝ひきいる軍勢とともにバウドリーノは、いよいよ東方への旅に乗りだすが、待ち受けていたのは思いもかけない運命だった。史実・伝説・ファンタジーを織りまぜて描きだす破天荒なピカレスク・ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
89
異端審問やドラゴンなども登場する旅路と共に密室殺人の発生するというエコーのエンタメ、盛り沢山。個人的に一角獣を連れた乙女、ヒュッパニアとの個別化する名付けが無数にある可能性を規定し、孤独に陥らせる無意味さや「神」についての問答が興味深い。しかし、隠者となったのに今まで崇めていた人々から誹られたことで再び、「神の国」を目指すようになったバウドリーノに「弱っちいな~」と思いながらもどこか、ホッとしたり。最後はメタフィクション的で思わず、ニヤリとしたり。ああ、楽しかった!2017/07/15
syaori
65
あの奇妙で幻想的な冒険譚は何だったのでしょう。漆黒の森、一本足や無頭人の街、ロック鳥。物語は円を描いて最初に戻りバウドリーノは去ってしまう。ニケタスは彼の歴史に意味を与えずバウドリーノは消えてしまう。賢者は問う、「本当だと信じたのですか?」 でも、聖杯、聖遺物、アレッサンドリア、彼は幾度も信仰が空想を「現実のものへ変え」ることを語ってきたのではなかったか。だから私は彼が情熱的に語った旅の意味を考えるのかもしれません。「意味は他人があとで勝手に考えるもの」、その言葉の後ろに作者の笑みを見るように思いながら。2019/04/26
ころこ
43
物語の枠は単純だが、要所でロマンが裏切られる。ゾシモスが持っている聖遺物を追って旅を続ける。どこに行くか、自ら読み解き判断して進むべき道を決めるのは意外と難しいことだが、明らかに問題の誰かを追うというのはた易い。読者は途中で訳の分からないことが書いてあったとしても、何をしているのか大枠で理解しており、途中から追いつくことができる。読者と物語の関係が、追う者と追われる者の物語の中に取り込まれているようだ。ヒュパテイアと出会い、真実の愛を発見する。コランドリーナとの関係を娘や妹に持つ感情と振り返り、ベアトリス2025/03/08
やいっち
36
この手の、冒険ロマンもの、ファンタジーものは、好き嫌いが分かれるだろう。小生の好みではなかった。ハリポタも一切、受け付けなかったし。そういうロマン心は、数十年の昔、喪失してしまった。 自分の貧しい心を自覚させられただけ。読み切るのが苦痛だった。2018/12/17
ヘラジカ
31
いよいよバウドリーノは伝説の王国を目指し仲間たちと旅立つ。そして物語は上巻とは打って変わって幻想小説の様相を呈し始める。まるでアルゴナウタイやオデュッセイアのように数々の怪物や異形の人々が登場するのだ。エーコは神話や伝説を現代に復活させたと言っても過言ではないだろう。冒険あり、戦争あり、ミステリーあり、もちろんロマンスありの第一級エンターテイメント。語り・騙りの力を存分に堪能し、最高に楽しい時間を過ごせた。(2017・28)2017/04/20