岩波文庫
シチリアでの会話

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  • サイズ 文庫判/ページ数 433p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003271513
  • NDC分類 973
  • Cコード C0197

内容説明

スペイン内戦に強い衝撃を受け、反フランコの活動に身を投じたヴィットリーニ。本書はファシズム当局の弾圧に脅かされながらも版を重ね、来るべき反ファシズムレジスタンスの精神的基盤となる。パヴェーゼ『故郷』と並ぶイタリア・ネオレアリズモ文学の双璧。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

120
ファシズムの超克を目的に執筆された寓話。登場人物が担う多義性・象徴性は極めて多彩かつ変幻自在で、人間の唯一絶対性を真っ向から否定。これらは終盤へ進むにつれてある程度の収斂を見せる一方で、情勢悪化による検閲対策で益々暗喩が凝らされ、必然的に表現も詩的なものになる。更には演出や背景もオペラ的な多角性で一筋縄ではいかない。思想と実践の必要性を訴える著者の転向に伴った葛藤や苦悩が垣間見れる。解説は本編の五割に及び、古典からアメリカ民衆文学まで幅広いアイデア元を説明。ここまでだと寓話としての広がりや余韻を削ぐかも。2022/06/04

NAO

64
ファシズム政権下のイタリアで書かれた本書には、象徴的な形でファシズム批判が描かれている。反ファシズム活動を展開する闘士の象徴である刃物研ぎのカロジェーロは「包丁や鋏が無い」といって活動の停滞を嘆き、ファシズム政権による弾圧を避ける潜伏者を象徴するエゼキエーレは「誰も何も知らない、誰も何も気づいていない」と反ファシズムの思想や行動が孤絶した状態にあることを嘆く。だが、語り手が出会うのは、どんな境遇にあってもたくましく誇り高く生きる人々で、そこに作者の良心と勇気、未来への希望を感じる。 2018/04/24

syota

30
「私は、あの冬、漠とした怒りの虜になっていた」という冒頭の一文を読んだだけでも、ただの紀行文でないことは明らか。列車内やシチリアの山村で出会った人々とのなにげない会話で成り立っているのだが、「暗喩と象徴と多義の用法」を駆使して、正面切った体制批判を避けつつ、読み手にファシズム打倒の強いメッセージが伝わるよう工夫されている。ムッソリーニ政権下で検閲を巧みにかいくぐって出版され、ファシズムに抵抗していた多くの人々を励まし、勇気を与えた記念碑的作品。著者の知識人としての良心と勇気に、心から敬意を表したい。2017/04/23

ぞしま

14
反/打倒ファシズム精神に貫かれたネオリアリズモの潮流とされる作品。筋は単純で、息子が故郷のシチリアの母親に会いに出て数日を過ごし再び発つだけ…とも言えるが、検閲を避ける表現を強いられる環境下、象徴/暗喩に富んだ寓話性が付与されている、その辺は長い(けどとても面白い)巻末解読に詳しい。物語に通奏低音として流れるのは貧しさだ。〈私〉は透明な存在としてそこに相対する。目はカメラのように…〈象徴的〉人物らと交わす会話は、哀しいトートロジーのようにリフレインする…最後の〈私〉の涙、あのシーンに全てが詰まっている2016/08/15

Michael S.

8
ファシズム支配下のイタリアで出版された反ファシズム文学である。検閲を突破するため内容は象徴や暗喩に満ちていて、暗号のようだ。100頁以上の詳しい解説がついていて作者や出版の背景や比喩表現の謎解きがついている。ネタバレしない程度に本文と解説を並行して読み進めると理解しやすいと思う。物語では主人公が、北イタリアから列車でシチリアへ行き、時空を超えた幻想の町へ入り込んで行くのだが、『海辺のカフカ』(主人公が東京から四国へ移動し不思議な町へ行く)に似た雰囲気があると思いました。村上春樹も読んだのだろうか? 2018/10/22

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