出版社内容情報
パヴェーゼ(1908-50)にとって,また当時のすべての知識人にとって,おそらく最も深刻な事件はスペイン戦争だっただろう.ヴィットリーニ『シチリアでの会話』とならぶイタリア,ネオ・リアリズム文学の原点.1941年刊.
内容説明
流刑地のイタリア南端の僻村から釈放されたばかりであったパヴェーゼにとって、また当時のすべての知識人にとって、おそらく最も深刻な事件はスペイン戦争だっただろう。ヴィットリーニの『シチリアでの会話』とならぶネオレアリズモ文学の原点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
415
ネオレアリズモは映画史の用語だと思っていたが、解説を読んで1930年代に文学運動が先行していたことを初めて知った。しかも、この『故郷』は、ヴィットリーニの『シチリアでの会話』と並んでネオレアリズモの源流に位置づけられているようだ。1935年のピエモンテ。物語には直接的には描かれていないが、ファシズムの影が覆う中、イタリアの田舎で起こった数日の出来事が描かれる。視点人物を徹底して語り手のベルトに固定したことが、この小説をレアリズモとしての最大の成功に導いたのだろう。そして、全篇を貫くのは倦怠と理不尽だ。2015/05/14
zirou1984
43
どこか馴染みがある様な、けど決して哀愁を感じる程ではない文体が終始印象に残っているのだが、解説を読んで納得。訳者自信も辛苦しつつ訳された文章はネオレアリズモ文学の源流に位置するものであり、それは意識的に文学以前の地を再興しようとする、時代に対する抵抗運動だったのだ。パヴェーゼの描く北イタリアの田舎は連帯と裏切りが心地悪げに共存し、性と暴力の強迫観念は風景と同化することで欲動を喚起するが、蟋蟀の鳴き声は内省と叙情を呼び戻す。最後まで残るこの居心地の悪さというのは、この地が私の故郷ではない「故郷」が故なのか。2014/08/27
syota
27
ネオレアリズモの原点と評される作品。イタリアの大都市トリノから片田舎の農家へやってきた主人公ベルトと人々との交流や、彼が遭遇する事件を描いている。農家の娘とのやりとり、次第に明らかになってくる彼らの秘密、そして突然の事件。ストーリーを追っていくだけでも飽きないが、それ以上に北イタリアの田園風景や農民たちの生活ぶり、けだるい空気感までもが伝わってくることに大きな魅力を感じた。一見純朴そうに見える彼らだが、実はしたたかで抜け目なく、生命力に溢れ、厚かましささえ感じさせる。そのリアリティが見事で心地よい。2017/03/27
kero385
26
パヴェーゼの長篇第二作「故郷」を読みました。先に読んだ「美しい夏」「流刑」「月と篝火」にも通じる素晴らしい作品でした。早速レビューを書いたのですがかなり長文となってしまい読書メーターの投稿には相応しくないと判断しました。骨組だけ記載します。 匿名性で開始され、匿名性に終わる。奇妙な冒頭の一文と、終わりの数ページを参照。 またしても夏。今回はしかも夏の数日間だけで、季節の移り変わりはない。 夏、街道、丘、新刑務所、都会、田舎などパヴェーゼの他の作品でも登場するモチーフが、「故郷」でも使われている。 2025/07/26
ソングライン
19
トリーノの刑務所で知り合ったタリーノ、同じく出所することになった主人公は彼に誘われ、故郷の農園で働くことに。そこで、タリーノの美しい妹ジゼッラに惹かれていく主人公、二人の想いが通じ合う泉での水浴び、息をのむ美しい全裸のジゼッラの腹部には大きな傷跡が。ジゼッラを慕う近隣に住むエルネスト、異常なまでにいがみ合うタリーノとジゼッラの謎の関係、主人公はジゼッラへの想いを募らせ、その過去に不信を抱きます。そして訪れる突然の悲劇、イタリアの美しい風景の中の数日間の恋愛劇に引き込まれます。やはりパヴェ―ゼすごい。2021/06/02
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