出版社内容情報
「新生」はダンテ(1265‐1321)の若き時代の詩31篇を骨子とし,その由来を述べた散文を加えたもので,イタリア文学において文学史的見地から重要であるだけでなく,その純化した愛の観念,表現上の多くの独自性,全篇を通じての若々しいいぶき,詩の由来における清新な響きなどが作品そのものに独立した価値を与えている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
無能なガラス屋
6
行きぬベアトリーチェは高き御空に、諸の天使のやすらふ御國に。かくてかれらと共にありて汝等女達を残しぬ。彼女を世より奪へるものは、他人をうばふ冷熱の狀にはあらで、ただそのすぐるゝ徳なりき。即ち彼女の柔和の光、永遠の主をかゝる福を召さんとのいみじき願ひを起し給ひて、彼女を下界より御許に到らしめたるなりき。なやましき世にあることのかゝる貴人に相適しからぬを主見給ひたればなり。-p992020/09/23
kero385
4
「新生」はそれだけで完結した作品であるが、「神曲」を知る我々には後の偉大な詩芸術への序曲とも思える。 一人の女性に捧げる愛の書であるが、その心情は誠に屈折していて、まるで思春期の自分をさえ理解できない少年のようだ。けれどその折々で歌った詩は、無論幾度も推敲されいるはずだが、自分の心情を分析し芸術という手綱で心うつ詩へと彫琢されている。最後、その永遠の女性を芸術として歌うために、今の自分では力不足だから、今後錬磨していくと誓うところは、なんとも言えぬ高揚感に包まれる。そして「神曲」が作られた。見事な序曲!。2023/05/28
takeakisky
2
神曲を読むのに、ベアトリーチェに出会う前にと。心の中での壮大なあっちへ行ったりこっちへ来たりに、頬が赤らむ。と、各詩の區分の如きというやつが挟まり、気分は愈々醒め、恥ずかしさは倍増する。あるところは克明に描かれるが、出来事の大半は曖昧模糊、漠然としか描かれない。これを下衆の勘ぐりを抑えながら読むのは難しいし、あえなく失敗に終わる。そして、あっけなく身罷るベアトリーチェ。何故か冷静な筆致のダンテ。悲憤慷慨することもなく、9の解説。カンツォネの區分。読めば分かるのに。終わりは、まるで神曲へのプロローグのよう。2025/03/02
GP-02
1
ダンテの幼少時代から青年時代までの話。ダンテ9才の時に出会った同い年のベアトリーチェへの初恋から失恋と、青年時代の若くしての彼女との死別。悲しみながらもそこから立ち直っていくダンテ。神曲の前の話だと思われる。2010/11/22
葛
0
ダンテ 昭和4年翻訳 訳者:山川丙三郎 1948年2月20日第1刷発行 1997年3月6日第16刷発行 発行者:安江良介 発行所:株式会社岩波書店 印刷:精興社 製本:中永製本 定価520円(本体505円)2025/04/29