出版社内容情報
本書はトルストイの遺著のうちでもっとも高い価値をもつといわれるもので,古今東西の聖賢哲人の思想を完全に自己のものとしつつ,人生いかに生くべきかを説いている.社会改良の手段を,単に個人の努力にのみ帰そうとする著者の態度をあきたらなく思う者も,平和と勤労を愛して生きた彼の英知に満ちた言葉には得るところが多いであろう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
81
聖書の解説書のようなもの。愛と神と欲望の引力について。トルストイを読むことは宗教を勉強することになるみたい。人生が説明できてしまうのだから、聖書を読まない手はない?多くの世界の名著の理解も助けるだろうね。2021/05/08
壱萬参仟縁
43
一生涯善良に生きぬこうと思ったら、自分のなすべき事となすべからざる事とを知らねばならぬ。自分は一体何であるか、自分の住んでいるこの世界はいかなるものか、ということを理解しなければならぬ(3頁)。もしもある人の生活がかんばしくないならば、それはその人が信仰を持っていない結果に他ならない(26頁)。子供は大人よりも聡明である。子供は人の身分など拘泥せず、どのような人の胸にも、同一のものが宿り住んでいることを感得する(77頁)。なんのために生きているかを知らない人々には、生きる事は実に困難である(101頁)。2016/06/20
Nemorální lid
5
『真正の信仰を認識するために、自己の理性を曇らせぬようにすることが大切である。』(p.33)『もしも労苦する事を欲しないならば、身をへり下らせるか、もしくは暴力を用いる事だ。』(p.177)などと言ったキリスト教の理念に基づく箴言集である。トルストイにおける他者への幸福、愛、信仰における純潔性こそを『人生の幸福』とする時、神は恩寵を以てこれを愛する。如何なる善人も悪人も、この純潔性は失われていないのだ。当著におけるトルストイの思想こそ、普遍的理念としてのキリスト教が独自の人生観を経て生まれたものである。2018/08/21