出版社内容情報
ここに収められた「イワンのばかとそのふたりの兄弟」をはじめ九篇の民話には,愛すべきロシアの大地のにおいがする.そして民話の素朴な美しさの中に,厳しい試練に耐えぬいたトルストイの人生観・国家観・道徳観等その全思想の深みがのぞいている.ロマン・ロランはこの作品を「芸術以上の芸術」「永遠なるもの」と絶賛した.
内容説明
ここに収められた「イワンのばかとそのふたりの兄弟」はじめ9篇の民話には、愛すべきロシアの大地のにおいがする。そして民話の素朴な美しさの中に厳しい試練に耐えぬいたトルストイ(1828‐1910)の思想の深みがのぞいている。ロマン・ロランが「芸術以上の芸術」「永遠なるもの」と絶讃し、作者自身全著作中もっとも重きをおいた作品。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
118
云わずと知れた表題作について。愚直には悪魔でさえも勝てん。2023/04/26
ハイク
113
ロシア民話を基にしたトルストイの9話の短編集である。日本でも広く知られている「イワンのばかとふたりの兄弟」がある。この他に印象に残った短編は「人にはどれほどの土地がいるか」は面白い。人間の欲を扱ったものだ。主人公は農産物の収穫を上げるには広い土地が必要だとの考えを持ち、ある地方で日の出ている間に歩くことが出来る範囲を無償で手に入れることが出来るという物語だ。次に「作男エメリアンとから太鼓」だ。他の国でも似たような民話があると思う。独裁者の王様の横暴に対する対処についての話である。手軽に読める本である。 2017/09/25
優希
104
面白かったです。ロシアの民話をベースにした短編集。わかりやすい文章と物語は哲学的で宗教的でもあるように感じました。素朴ながらも試練が見え隠れするのが興味深いです。何を大切にすべきか考えさせられます。キリスト教に通じるものがあるようにも思いました。2016/06/27
k5
92
題名がユニバーサルデザインではないので、もう小学校ではあまり読まれないのではないかと思ったり。ただ、説教くさいと思っていたのが、いま読み返すとめっちゃ面白いですね。軍人の長男と商人の次男は、悪魔の誘惑で痛い目にあうのですが、ばか(=欲がない)イワンは無敵という話は覚えていた通りですが、小悪魔がわらを兵隊にするとか魔法らしい魔法を使うのに対して、大悪魔はコンサル的なアプローチを使うのが笑いました。長男は軍拡で、次男はハイパーインフレでやられます。再読の価値ありますよ。2020/07/21
syaori
69
有名な『イワンのばかとそのふたりの兄弟』から始まって、その欲望の大きさのために身を滅ぼす『人にはどれほどの土地がいるか』、祈り・信仰は教義や言葉によるのではないという『三人の隠者』、そして「自分の近い者のために善をなすことに、つとめなければならぬ」という『三人の息子』まで、トルストイが民話や伝説に材をとって語った小品集。素朴なその物語たちには作者の理想と願いが込められているようで、『三人の隠者』ではないですが祈りの言葉によらない祈りのよう。それならば、これは何と真摯で美しい祈りなのだろうかと思います。2017/11/20