出版社内容情報
近親相姦,親殺しといったドラマの中に悪徳と美徳,親と子,加害者と被害者の対立を示すことで,人間の中の両項性を描き出した悲壮小説集『恋の罪』は,サドの作品の中でも完成度が高いとされる.未邦訳の4篇で構成.
内容説明
近親相姦、親殺しといったドラマの中に、肥大化する想像上の悪と現実の犠牲者の嘆きのコントラストを描いた悲壮小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
34
15
冒頭の運命論の話があまりに酷い話で、ケラケラと笑ってしまう。「あなたの妹であり、ナンシーであなたに誘惑された娘であり、あなたの息子をあやめた女であり、あなたのお父さまの妻であり、同時にあなたのお母さまを刑場に追いやったいまわしい女でもある私だとわかってちょうだい。」2020/04/06
藤月はな(灯れ松明の火)
12
ホラードラコニアの澁澤龍彦訳の「淫蕩学校」と「ジェローム神父」しかサド作品は読んでいないのですがこちらは恋愛の貶め合いや知らずの近親相姦、正当防衛の殺人など恋愛におけるエゴイズムと人々の機微、ラストには神による救いを求める真摯な人々の姿を描いています。劇映えしそうな作品ばかりです。もし、シェークスピアの「タイタス・アンドロニカス」とサドのこの作品が劇化されたら眉を顰められるのは前者の方です。このサド作品はおどろおどろしくありませんし、超越したものの救いもあるのでご安心を。2012/10/12
qwer0987
8
身勝手な人物が、恋する相手や近しい相手を意地悪い策謀で陥れていく。どれもそんな構図を持った作品ばかりであった。そういった独善的で愛欲の強い人物の心理はどうにも理解できず、何でこんな策略をめぐらすのだろうと戸惑うし、細かい部分で大味だと感じる。しかしストーリー展開は劇的でそれなりに楽しめる。個人的に一番良かったのは『エルネスティナ』。恋する二人を割こうと策を巡らせ行動する様は実に卑劣で理解できないけど、妙な凄味がある。ドラマチックな内容で充分に楽しめた。2024/06/24
刳森伸一
5
サドが生前に自身の名前を冠して発表した適法小説のうち、最も評価の高い短篇集から4篇を抜粋した作品集。美徳を持つ善人が幸福となり、悪徳を持つ悪人が不幸となる、というような道徳的な物語に潜む欺瞞を暴き出す。各篇とも100頁程度あるため、全て読み応えがあるが、最も面白かったのはサド版オイディプス王ともいうべき「フロルヴィルとクールヴァル」。2021/01/16
ベック
3
因果はめぐる。ていうか、この時代の人ってエグいんだよね。日本も戦国時代なんか、親兄弟関係なく殺し合ってたもんね。人間の業っていうんですか。こわいこわい。2020/09/07
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