出版社内容情報
本書は訳名をつけるなら「豪勇任侠の郷士」とでもいおうか.時は17世紀の初頭,人情風俗ともいまだルイ大王の古典的合理主義に統制されない自由奔放な世界である.尾羽うち枯して,赤貧の館にくすぶっていた若き男爵が,旅役者の群れに身を投じて「キャピテン・フラカス」の芸名を得,一座の女役者と結ばれるまでの波瀾重畳のメロドラマ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
3
落剝した貴族のシゴニヤック男爵は自分の運を試すため旅芸人の一座に身を寄せてパリを目指すことにします。その途中、一座の道化役が不慮の事故で死んでしまったため郷士フラカスと名乗り舞台に上がることになったのでした。一座の女優イザベルとの恋や、一座の浮沈に合わせたさまざまな出来事が降りかかってきます。早速恋敵も登場して以下、次巻。気になります。しかし、多分最後は大団円になるだろうフラカスの行く末より、山賊のアゴスタンとその手伝いの少女シキタが今後どうお話に絡んでくるのか、彼らの来し方行く末が気になるのでした。2015/10/25
Fumoh
2
ユゴーと共にロマン主義陣営にいたゴーティエは、彼なりの「大衆が主役の物語」を作った。主人公シゴニャックは貴族だが、旅芸人の一座と行動を共にしている。そして下層階級の風俗が思う存分に描かれ、その含蓄のある世俗生活、また民話や情念といった精神的なものも描く。詩的かつ写実的ともいえるほど詳細で象徴的な生活描写は、ユゴーと違って純文学的なものとの統合を目ざしたゆえだろうか。大筋としてはシゴニャックが旅芸人の一座と共にし、その中にいる女優イサベルとの恋の発展を予感する、というもの。最終節でライバルが登場している。2024/03/25
迦陵頻之急
2
ルイ十三世の時代と言えばダルタニヤンと三銃士、旅芸人一座に加わった貴公子と言えばサバチニのスカラムーシュだが、波乱万丈の物語と言ってもあちらほど派手にエンタメしておらず、悠々たるロマン主義小説といったところ。今のところ騒動続きの道中記といった風情だが、上巻末に至って絵に描いたような悪役青年貴族が登場。ようやく主人公がヒーローぶりを発揮するか。2024/01/14
ミコヤン・グレビッチ
2
「雄弁は銀、沈黙は金」。だが、このゴーティエ晩年の長編小説では「饒舌は愛」だ。人物や情景の描写が懇切丁寧で長々しく、話がなかなか前へ進まない。しかし、それはこの物語をじっくり楽しんでほしいという、作者の愛情ゆえと理解すべし。十九世紀フランスの筆達者の薫陶を受けて、想像力と語彙の鍛錬をしていると思えば、いささかご都合主義的な展開も気にならない。若い人は、ただスローで古臭い(1952年の版で旧漢字)としか感じないかもしれないが、それを味わうのがオトナの嗜みというもの。ストーリーの概要などは中巻と下巻の感想で。2020/06/25
はちくま
2
題名が「キャピテン」だし、冒険ものっぽいので、なんとなく海の男の話かと思ったら、陸の話でした。それはともかく、最初のローテンションな始まりにはどうなることやらと思ったけど、読み始めたら止まらなくて楽しい。ジェラール・フィリップとか演じてそう。2015/02/09
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