出版社内容情報
「地獄」で人間の本能を赤裸々に描いたバルビュスは,第1次大戦を主題としたこの作品で,さらに鋭く人間性を追究する.歩兵部隊の名もない兵士たちの救いのない戦場生活.戦争という暴力の前にあえなく屈する個人の自由.戦争はいったい人類に何をもたらすか? のちに平和運動に挺身した作者の熱情あふれる名作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
26
ドイツとの交戦、次々に倒れる仲間、負傷者で溢れかえる病院…下巻の主役は『砲火』と犠牲者達です。同じフランス人でも、戦争に対して抱くイメージは天地ほどの隔たりがあることに驚きます。銃後の婦人達は、国のために死ぬことを〝美しい〟と言います。前線に出ることのない役人達は、〝儲けれる〟〝いつまでも続けばいい〟のが本音。戦争こそ最強の不条理製造マシーンです。最終章、バルビュスの叫びともとれる『夜明け』だけでも読む価値が有る作品。もっと普及してもいいのにな…と思いました。2016/07/11
ののまる
10
実際に従軍したパルビュスの描写がリアルすぎ、残酷すぎ、悲惨すぎで、出版後「非国民」などとも言われたが、帰還兵には圧倒的な支持を得た。なぜ腸をさかれ身体を真っ二つに裂かれ、死ななくてはならないのか、ドイツ兵もフランス兵も。2021/04/03
歩月るな
5
戦争映画を色々見てきて、なるほどと思うのは、センセーショナルな飾らない表現で、目に映ったモノ全部書き記す、そんな数々の描写が、これまで読んだ何よりもグロテスクなこと。強い思想に物語が奉仕している類の作品としての小説よりは、やはり手記としての構造が、ルポルタージュとしても機能しているのではないだろうか。1915年12月のこの作品から、3年掛からなければこの戦争は停止しなかった事を強く受け止めてしまう。『1917 命をかけた伝令』ですら2年先が想定されている。ちなみに、なかなか危険な文章でもあるだろうと思う。2020/10/20
ペンギン捜査官
0
彼らの嘆くその瞬間に私ができることは何もなく、ただ見届けるばかりだった。 読み終えた今、これからの私がすべきなのは、彼らが紡いできた過去を正しく学び、これからの未来を紡いでいくこと。当たり前のことだけれど、過去の過ちを鮮明に知ることで伝えていくその地獄は、色褪せたものではないようにしたい。 これから定期的に、戦争小説に手を伸ばしていこうと思う。2024/11/08
元老院議員
0
西部線線異常なしよりも戦場の描写はリアルにキツいと思うけども「小説」としては西部戦線…の方が上かな。2022/03/10