出版社内容情報
マラルメやランボーなど象徴派の巨星たちが登場した後の19世紀末、フランス西南端のピレネー山脈の麓から朝露にも似た澄んだ声が響いて、人々を生命の輝きに満ちた溌溂とした詩世界に導いた。フランシス・ジャム(1868-1938)であった。〈自然と愛の詩人〉の詩作の歩みを伝えるべく、初期から最晩年に至る代表作を精選。
内容説明
フランス象徴派の巨星たちが登場した後の19世紀末、パリから遠く離れたピレネー山脈の麓から朝露にも似た澄んだ声が響いて、人々を生命の輝きに満ちたはつらつとした詩世界に導いた。自然と愛の詩人ジャム(1868‐1938)であった。素朴で愛すべき詩「ぼくは驢馬が好きだ…」など、初期から晩年までの代表作を幅広く収録。
目次
『明けの鐘から夕べの鐘まで』より
『桜草の喪』より
『空の晴れ間』より
『韻律詩集』より
『蜜色の光』より
『キリスト教徒の農耕詩』より
『聖母とソネット』より
『墓碑銘』より
『ラ・フォンテーヌの墓』より
『四行詩集』より
『わが詩的フランス』より
『過ぎし時からとこしえまで』より
『泉』より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いりあ
19
フランスの詩人 Francis Jammesが生涯にわたって発表してきた数多くの詩集から編集した選詩集。フランシス・ジャムの作品は、"三人の乙女たち"に続いて2作目。ジャムの詩は、彼の生活や彼の周りにある自然の風景などから題材が多く取られており、とても清々しい印象を与えます。ジャムの心境の変化により、重く暗いイメージの作品もあるにはありますが…。そして、やはりフランシス・ジャムという人の作品からは、"少女"というキーワードが外せないです。もし、彼の作品が気に入ったら"三人の乙女たち"もおすすめです。2015/05/14
おおた
18
苔にまで目が行き届く文章をものす人は貴い。「愛と自然の詩人」という肩書きがぴったりの自然と人間賛歌。若いうちはおおらかに美しさを歌い上げるが、知人が亡くなったり恋に破れたりして書かれた「桜草の喪」の哀しさは格別。結婚を経て中年になると安定してしまうが、晩年に至ると「普通の幸福」を見いだし、これほどの普通さは21世紀の今日に忘れられてしまったものかもしれない。2018/05/05
魚京童!
16
なぜ惹かれるのだろうか。私にはまだ言葉が足りなさすぎる。2018/02/10
シンドバッド
7
翻訳者手塚は第一人者であり、ジャムの詩の美しさが見事に味わえる。 文庫本で、海外の詩集を新しく出版するのは、岩波だけというのも、ちょっと奇異な気がする。 私にとっては、対訳シリーズは、あまり魅力が無く、同じ頁数なら、多数の詩を素敵な日本語で楽しみたい。 正に、それを叶えてくれている一冊。2013/04/01
さちこ
7
麓の夜明けの冷涼さを、寒々しさではなく澄み切ったものとしてとらえる。真夏の昼の暑さは、灼熱でなく世界を温めるあたたかさ。人間の横暴にじっと黙ってつき合うロバのまなざしの中に世界の優しさがあり、白い薔薇と百合、蓮が憐れみの雫を落とす。美しい世界観。2013/02/03