出版社内容情報
田園詩人フランシス・ジャム(1868‐1938)の素朴・清純な詩風は,高踏派・象徴派の遺産を受け継いだフランス詩壇に清新なひとつの展望を与えた.本書は,「誕生の夜」以下「若き日の恋の夜」「孤独なる魂の夜」など悩み多き青春の夜々を点描した,一種自叙伝風の散文詩集.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スプーン
39
様々な夜の情景が、この世のあまたの美しきものを知らせる。そう、我々が生きているのは神話の世界。一本の指の動きが芸術と化す。人皆、詩人と成れ。全てを神に捧げよ。真の輝きはその限りにありて。2021/12/26
おおた
14
やわらかくメランコリーな文をはたして詩と呼ぶべきなのか、タイトル通り「夜の語り」という静けさが全体を覆う。誰もいない静かなところで静謐と僅かな灯りだけを付き添いにひもときたい。幼い頃に闇がこわくてその先には帰れない場所があった、そんな心に立ち戻ってしまう。2017/07/23
ぱせり
12
読む、というより、夜を皮膚にまとうような気配を楽しむ。美しいな。しかもそれは、遠いところではなくて、たぶんわたし自身の身の周りにもある、わたし自身の中にも、探せばみつかるかもしれない美しさ。孤独でいることの充実、孤独だからこそ研ぎ澄まされる珠のようなものに触れる嬉しさ。 2016/09/27
双海(ふたみ)
12
正字・正仮名だから味わいが増します。日本語というのはこうでなくちゃいけないと改めて思いました。本書は素朴・清純な詩風で知られる田園詩人ジャムが様々な夜を歌います。「若き日の恋の夜」「孤独なる魂の夜」など悩み多き青春の夜々を点描した、一種自叙伝風の散文詩集です。 2014/03/10
壱萬参仟縁
12
「テオダ・ドゥ・セヴラックとの夜」で、「貧しい職人たちの眠つてゐる街路(とほり)でほど、物音の耳にたつところは外にない」(71頁)。この貧しい職人というのは、伝統工芸品の職人の工賃を見てもわかる。確かに20C前半は櫛と米を物々交換していた地域もある(木祖村村史と聴き取りによる)。1929年の世界恐慌の頃に出た本のようだ(85頁)。2014/01/23