出版社内容情報
フランス革命は,産業と科学とを結びつけ,大工業の発達を促し,労働者を組織化せしめた.ここに労資の利害関係の対立が社会的舞台の前面に押し出されてきた.ゾラは,この問題を社会の重要な要素として題材にとり,労働者の生態を描いた.プロレタリア文学の先駆をなす小説.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アドソ
9
労働者、ブルジョワジー、革命家、煽動家、テロリスト。悪いのは誰なのか。労働者が一時の暴動でブルジョワを倒したところで、それは新しいブルジョワを生むだけなのだ。社会の構造自体はなんら変わらない。皆が自分に利益を引き込もうと画策する中で、テロリストだけは自分に何の得にもならない活動で他人だけを不幸にする。論理が狂っている。最悪の展開と壮絶な救出劇。2016/05/13
サニジョプッ
4
この下巻に描かれる主人公とヒロインの凄絶過ぎるラブシーンは、西欧近代文学のハイライトの一つだと確信している。
Sin'iti Yamaguti
1
凄惨・凄絶なまでのラストからは普通ならば絶望しか生まれないように思われるが、エティエンヌは一段と成長する。そこにゾラは将来の社会への希望を託しているようだ。ジェルミナール=芽吹き月、のタイトルがここに明らかになる。2019/12/22
Э0!P!
0
炭坑が、近代を体現した無機的な怪物として立ち上がる。このモチーフは、「獣人」における機関車に似ている。だがこの怪物は単にのたうち回るのみではなく、エティエンヌを飲み込んだのち浄化して地上に帰す、ヨナ書の大魚のようでもある。エティエンヌは自身の暴力性を解放し宿敵を打ち倒し、愛する女との合一を果たす。過去を超克し、また新たに民衆の力のうねりへと流れ込む。生き埋めの人間を助けるためにブルジョワジーと労働者たちが一心になる姿は、人類の夢が一時的に顕現したものか。希望はまだある。2023/05/13
takeakisky
0
疾る。疾る。消耗した。消耗した。第六部までで終わってもいいんじゃない?と思ったが、ソナタで言えばコーダにあたる第七部、新たな展開と終局。満足。長い長いエピローグは、このストーリーをもってしなければ、取ってつけたように響くだろう。そうさせないこの本の力。解説も読みましたが、文学史上の位置付けなんてどうでもいいんじゃないかしら。えらいもの読まされたという興奮だけで十分。しばらく間を取って次の本読もうと思う。2022/09/25