出版社内容情報
フランス革命は,産業と科学とを結びつけ,大工業の発達を促し,労働者を組織化せしめた.ここに労資の利害関係の対立が社会的舞台の前面に押し出されてきた.ゾラは,この問題を社会の重要な要素として題材にとり,労働者の生態を描いた.プロレタリア文学の先駆をなす小説.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
14
主人公エティエンヌを取り巻く二人のヒロインであるカトリーヌとムケット。ぽっちゃりした体型に引け目を感じながらもエティエンヌへの一途な想いを素直をぶつけてくる愛くるしいムケットとの関係が進展するのが第四部。ゾラの描くヒロインの中でもこの三角関係(よりはもう少し複雑だけど)を成すこの二人が今のところいちばん印象的で、個人的にはムケットにはそれなりの幸せを掴んで欲しくなるところ。いよいよストライキは本格化。支配者側に対する鬱屈を晴らす労働者側の狂乱も克明に描かれ、エキサイティングな展開に。2021/06/24
アドソ
10
炭鉱労働者困窮の末のスト突入。エティエンヌが指揮した同盟罷業団体は思わぬ暴動へと発展。徹底したリアリズムは吐き気を催すほどで、古めかしい文体と訳語がはからずもその効果を倍増する。食うや食わずの生活も耐え難いが、多少のパンがあったところですぐに別の悩みが生まれるだろう。無限のパンがあったところで別の悩みが生まれるだろう。激情の労働者、その中で冷静な良識をもつ親方、われ関せずのブルジョワジーらのコントラストがストーリーを盛り上げる。2016/05/07
umeko
3
働いても、働かなくても地獄。ストライキ継続。そして暴動へ。2010/08/13
→0!P!
1
集団行動の描写が本当にゾラは上手い。炭鉱から炭鉱へと雪崩れ込み、最後邸宅へと襲い掛かるまでの様子をよくもこんなに長く書くことができるものである。エティエンヌは、ストライキの敢行に漕ぎ着けるが、予想外の長期の対決により、民衆の爆発エネルギーの制御を失う。正義が憑依した民衆の力を止めることはできない。メグラの剥ぎ取られた陰部が暴徒を導く松明の火となるところがハイライト。2023/05/11
takeakisky
1
それぞれの痛ましさとそれぞれのいじましさ。読んでいるこちらまでひだるくなってくる。ジャンランの隠れ家が眩い。クレリエールでの集會を境に沈滞から怒濤へ。また、この集會場へもっていく展開がダイナミック。パノラマ。ここから先は想像力の飽和点を越える。頭に酸素が足りなくなる。寸止めで陰惨にならない。ねじれた機知が読者を押し潰すところまで追いやらない。巧みな外し。五部五章エンヌボー氏の独白。思わぬ人が突く真実。ギャップづくりと対比、意外な共通性、外し。翻弄される。まだまだあと二部ある。ゾラは異常だと感ずる。2022/09/24