出版社内容情報
作者はフランス屈指の名門の生れ.一生涯貧困生活を送りながらも孤高,あたかも流謫の天使にも似て世の常ならぬ郷愁に耽り,その夢想はあくまでも高潔,俗衆社会を愚弄する声は痛烈であった.彼こそ正に19世紀文学史上の妖星ともいうべき存在であろう.「残酷物語」のなかの短篇「未知の女」「断頭台の秘密」など28篇を収める.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
17
「ヴィエラ」にも通じる「蟲の知らせ」の最後の一文が仄めかしている意味の怖さが秀逸すぎます。「群衆の焦慮」は大事にささやかながら大きな働きを果たした者は最終的にはカッサンドラのように忌み嫌われるか歴史に埋もれる皮肉が苦い。「人になりたい望」は人物を演じ続けた老俳優が人間になりたいがために放火などの罪を犯す、なんともはた迷惑な話ですが最後の意味に気づかなかったのは自分の嗜虐心にも満足のいくものでした(黒笑)「同窓」の皮肉めいたオチや「戀愛無燮」の誓いによる永遠を確信して満足気に逝く兵士のエゴの描写も見事でした2013/05/13
壱萬参仟縁
16
「つぇ・い・ら綺談」で、 ひらがなに右線が引かれている ケースがある。 地名や人名に付されているのか。 とんきんは東京などと 140頁の注には書いてある。 2014/06/10
takeakisky
1
いいところを上巻に集めすぎた感。コミカルなテイストの作には感心できるものはすくない。翻訳のせいもあるのかもしれませんが。そんななか、未知の女のつのるつのる緊張感、白象傳説の人を喰ったばかばかしさ、トレドの愛人の心胆寒からしめるあたりが収穫。戀愛無雙の静かであり、騒々しくもあり、沈鬱でありつつ浮ついてもある一篇の神々しい結末で全篇の幕を閉じる構成には、ちょっとぐっとくる。2025/03/23