出版社内容情報
ユーゴー,V.(ヴィクトル)[ユーゴー,V.(ヴィクトル)]
著・文・その他
豊島 与志雄[トヨシマ ヨシオ]
翻訳
内容説明
1832年6月5日、パリの共和主義者は蜂起した。激しい市街戦が展開する。バリケードにたてこもった人々の中にはマリユスとジャン・ヴァルジャン、そして今やスパイとして捕われたジャヴェルの姿があった。物語はいよいよ大詰にむかって進展する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
133
コゼットとの結婚をめぐって祖父と離反し、六月暴動に身を投じるマリユスを救出に向かうバルジャン。その超人的能力を駆使した救出劇、臨場感豊かな戦場描写、主要人物たちの命運などドラマはいよいよ佳境へ突入。話のスケールの割に通俗的に狭い人間関係は戯曲的なテイストも感じる。あらゆる進歩の基盤となる良心、それは絶対的無謬が存在しない社会において人間が服従すべき指針であり、そこから得られる満足は幸福よりも尊い。己の義務に準じた主人公たちを通して社会的刑罰が孕んだパラドックスや不滅の愛を描き切ったロマン主義の代表的傑作。2018/05/27
nakanaka
77
漸く読み終えました。映画が好きだったので読み始めましたが映画よりやはり面白い。読者に対して親切過ぎるあまり情報量が多すぎて辟易することもありましたが、後半になるとそれすらも面白い、勉強になると思えてきました。本当に読んで良かった、大変でしたが。ジャン・ヴァルジャンの誠実さとコゼットへの愛情は勿論のこと、ジルノルマンのマリユスへの愛情にも感動しました。またジャベールの貫く正義やガブローシュの可哀想過ぎる境遇など見どころが沢山ありました。良い意味でも悪い意味でも物語のキーマンとなったのはテナルディエでしたね。2024/01/19
NAO
72
ミリエル司教は、愛の人だった。ジャン・ヴァルジャンも、愛の人だった。ミリエル司教の愛は、ジャン・ヴァルジャンにしっかりと受け継がれたのに、命の恩人に対するコデットのジャン・ヴァルジャンへの信頼感があまりにも希薄で、孤独なジャン・ヴァルジャンが痛々しすぎる。孤独なジャン・ヴァルジャンの葛藤と、ずっとジャン・ヴァルジャンは極悪人だと信じ続けてきたジャヴェルの分裂のシーンが強く心に残っての大団円。すべての誤解が解けるが、ジャン・ヴァルジャンの魂が昇華されるためには、ここまで苦しまないといけなかったんだろうか。2017/08/13
ケロリーヌ@ベルばら同盟
60
【第162回海外作品読書会】フランスは血を流す。されど自由はほほえむ。1832年6月5日、シャンブルリー街コラント亭に集う若き学生らに率いられた、僅か50人の者は、6万の兵を迎え撃つ。社会的産褥と革命的分娩の偉大な19世紀を経て、20世紀の幸福を齎す進歩を招来するための光を求める戦いの渦中に、共に闇を抱えた青年と老人が加わる。愛を喪い、愛を奪われ絶望して。初めて得た幸福の輝きを奪い去ろうとする者の命を背負って彷徨する暗渠。生涯を自らの心の徒刑囚として生きた男の苛烈な人生の最期に、安らぎは訪れるのだろうか。2020/08/08
chanvesa
44
自由と進歩への称賛・信仰(252~263頁)は、混迷の21世紀の今となってはどこか冷めた眼で文字を追ってしまうが、ジャンのラストにおけるストイックな生き様を見せつけられると、ヒューマニズムが途端に輝きを放つ。感動するに決まっているじゃないか、と頭の片隅をよぎっても、あなたはすごい人です、これが結果として幸せということなのですね、と思ってしまう。パリの下水道に関する解説は、その不衛生で毒ガスを放つ迷路の中をマリユスを背負い突き進むジャンの勇敢さと、テナルディエの大逆転の見事な布石であり、ぐぅの音も出ません。2015/12/31