出版社内容情報
あまりにも名高いこの不朽の名作の表題レ・ミゼラブルとは「悲惨な人々」という意味.ユーゴーは主人公ジャン・ヴァルジャンの波瀾の一生を描きつつ,貧しい民衆に寄せる限りなき愛情,そして人類社会の進歩へのゆるがぬ確信を表現したのである.三百枚に及ぶ原書挿絵を収録.
内容説明
軍艦から海中に身を投じて巧みに官憲の目をくらましたジャン・ヴァルジャンは、コゼットの前に姿を現わし、彼女を悪辣なテナルディエ夫婦のもとから救い出す。2人はパリの一画に身をひそめるが、執拗なジャヴェル警視の追及の手はついにここにものびてきた。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
126
狡猾なテナルディエ夫妻からコゼットを救い出したヴァルジャンはジャヴェル警部が迫る中、修道院へ逃げ込む。夫婦との駆け引き、追跡劇など手に汗を握るような緊迫感があってひと盛り上がり見せてくれる。もっとも、根底には「禁欲的閑居に反対!」という著者の皮肉が込められており、「強度の自我主義」「地獄」と辛辣な文句が並ぶ。終盤はボナパルディズムに傾倒した若かりし頃の著者の分身マリユスが登場、祖父からの目線にその思い入れが顕現している。バルジャンのハンカチをコゼットのものと勘違いするくだりは本編の中では珍しくユーモラス。2018/05/22
NAO
74
前半は、コゼットの救出、ジャヴェルから逃避行、修道院への再入所となかなかスリリング。執拗に警吏につけ狙われるジャン・ヴァルジャンにも恩義を感じてかくまう者がいるというのは、神の配慮か。だが、ひっそりと陰に隠れてしまったはずの二人が、ある日突然、もう一人の重要登場人物マリユスの前に姿を現すという不思議。マリユスの周辺から詳細に描かれる当時のフランスの社会情勢もなかなか気がかりだ。2017/08/08
nakanaka
68
ストーリーは言わずもがなですが、そこ以外の補助的な内容がとても勉強になり興味深く面白かったです。ナポレオンが連合軍に敗れるワーテルローの戦いや、修道院とは何なのかなど。またジャン・バルジャンに二度訪れる危機を救ってくれたのが二度とも神の家たる教会と修道院であることが彼という人格を形成するにおいて非常に重要であったということが印象的でした。フォーヴァン爺さんのMVP級の活躍も楽しめました。次巻へ。2023/12/11
ケロリーヌ@ベルばら同盟
50
【第158回海外作品読書会】過酷な運命を辿るジャン・ヴァルジャンの人生と、彼に関わる人物や物事の性格や来歴に事細かく筆を割き、大革命以後の時代の世相、人心、信仰、精神の歴史を描き出す本書。第2巻の白眉は、愛を知らず、祈りをしらず、暗闇に悴んだ二つの魂の邂逅。悪辣で因業なテナルディエ夫婦から、コゼットを救い出したジャンは、同時に自身をも救済する。青春を徒刑の陰惨な日々に過ごし、柔らかな情緒を凍結させていた心が、温かく溶解する。かつてミリエル司教に拓かれた徳の地平線がコゼットへの愛で輝き、生きる歓びが訪れる。2020/06/13
chanvesa
40
情けは人の為ならず、ということわざを体現するかにようにフォーシュルヴァンに助けられるジャンとコゼット(これで終わるとは思えないけれど…)。しかし、この修道院の場面は面白い。ジャンがお棺に入って修道院を一回でる場面ははらはらする。そして第七編余談は、修道院が『無縁・苦界・楽』の最初に出てくる縁切寺のような、治外法権的な存在で、統治者からすればいささかやっかいな存在であったことが興味深い。修道院の壁の外をジャヴェルがうろうろ探し回っていたのだ。以前観た(半分以上寝ていた)映画「大いなる沈黙」を思い出した。2015/12/28